ク イ ン ト ・ オ ー ラ ル ・ イ ン フ ォ メ ー シ ョ ン 4QUINT ORAL INFORMATION IgA 腎症の治療法にはステロイドパルス療法があり、この治療法は骨粗鬆症との関連性も注目されている。ステロイド性骨粗鬆症に用いられる薬剤としてビスホスホネート製剤が挙げられるが、「顎骨壊死」のリスク管理が必要となるため、三﨑氏は臨床現場において必ず歯科受診を勧めているという。その中で IgA 腎症の患者さんの口腔内には、ある共通点があった。 「血尿タンパク量が多く腎機能も低下した患者さんの多くで、口腔内がむし歯だらけの状態を認めたのですが、ある患者さんで歯科治療を行うと尿タンパク量が減少したのです。それ以来、もしかしてむし歯と IgA 腎症は関連しているかもしれないと考えるようになりました」 指定難病とされる IgA 腎症の原因究明をライフワークとしている聖隷浜松病院腎センター長の三﨑太郎氏(図 1)。これまで数多くの慢性腎疾患の患者さんを診ているなかで、う蝕とIgA 腎症に関連性があるかもしれないと考える出来事が起きたという。 「IgA 腎症は唾液などにも含まれる体の免疫を守るはたらきをする『IgA』というタンパク質(抗体)が原因で、腎臓に炎症が起きる病気です。患者数は、子どもから大人まで幅広く、日本には約 33,000 名がいると推計されています。主な症状として、血尿やタンパク尿が出て放置すると末期腎不全に至り、透析や腎臓移植の治療が必要になります。初期症状が無症状のため、健診などで見つかる場合が多いです」三﨑太郎みさき・たろう 近年、口腔の健康が全身の健康に寄与する研究データが蓄積され、口腔ケアをはじめとする歯科医療の重要性に注目が集まっている。この動きは国民の歯科に関する興味・関心の高まりだけでなく医科からも熱い期待が寄せられている。 腎臓内科医である三﨑太郎氏(聖隷浜松病院腎センター長、腎臓内科部長)は、IgA 腎症を悪化させる要因として口腔細菌に注目し、臨床と基礎研究の融合に取り組んでいる。 本欄では、三﨑氏がなぜ歯科に興味・関心を抱いたのか、そのきっかけについてうかがうとともに、IgA 腎症の予防に対する歯科への期待と可能性についてうかがった。(編集部)図 1 三﨑氏がセンター長を務める腎臓内科・腎センター。1999 年、浜松医科大学卒業。2000 年、東京専売病院(現・国際医療福祉大学三田病院)。2002 年、磐田市立病院 内科。2004 年、浜松医科大学第一内科腎臓内科。2010 年、カリフォルニア大学サンディエゴ校。2011 年より聖隷浜松病院に勤務し、現在、同病院腎センター長、腎臓内科部長、透析科部長。聖隷クリストファー大学臨床教授も務める。放置すると透析に至る「IgA 腎症」う蝕と IgA 腎症は関連性あり?ウエルテック 聖隷浜松病院「IgA 腎症」と口腔細菌の関連性―重症化予防のために歯科ができること―
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