歯科衛生士 2025年1月号
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?!思わず自然に動いちゃ患者さんをよりよい行動に導く方法。January 2025 vol.49Illustrator:たかまつかなえ野口有紀Yuki NOGUCHI静岡県立大学短期大学部歯科衛生学科教授・歯科衛生士 臨床現場において、年に一度の定期健診を促してもなかなか来ない患者さんや、何度ブラッシング指導をしても同じところに磨き残しがあるなど保健指導をしても一向に響かない、行動に移せない患者さんに遭遇することは、少なくないのではないでしょうか。それには、「忘れていた」「今度やろう」「面倒だった」などさまざまな理由がありますが、人は直感的に疲れない行動をとってしまいがちです。 私たちの日常的な意思決定は合理的ではなく、直感的にすばやく無意識に疲れない行動をとります1-3。毎日私たちは、多くの決断をしています。朝起きて、顔を洗い、歯を磨き、服を着替え、食事をし、仕事をしたり、買い物をしたりします。余暇の時間は家族や友人と話をしたり、テレビを観たり、ネット検索やSNSをしたり、入浴したり、趣味を楽しんだりします。このように1日のうちに多く行う直感的な行動は、日々の習慣となります。個人を取り囲む環境はさまざまでかつ複雑なため、一方的な指導の効果は限定的といえるでしょう。 ちょっとしたきっかけで、よりよい行動に導いた事例があります。熊本県の熊本地域医療センターでは、離職率が20%を超えており、超過勤務が多いことがその理由として挙がっていました4。超過勤務の要因の一つに、勤務終了時刻を過ぎてからも引継ぎ可能な業務を行っていた現状がありました。そこで「看護師ユニフォーム2色制」を導入し、ユニフォームの色を日勤はピンク、夜勤をグリーンにしました。その結果、2年間で日勤の看護師一人あたりの年間平均残業時間が111.6時間から21.7時間と約90時間も減り、夜勤は0時間になりました。時間外勤務をしている者が一目でわかり、定時で業務を終わらせることへの意識が高まり、タイムマネジメントにつながったのです。さらに、離職率は9.9%へと削減されました。このように環境設計を変えただけで、適切な意思決定ができ、自然によりよい行動へと促すことができるのです。79うTOPIC“無意識”は、変えられる?!

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