歯科衛生士 2025年6月号
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mmHgf1&歳%:AQ読者が本当に聞きたい 10月号特集1はじめに 人口高齢化は世界中で進んでいます。あらゆる生き物は 今回は、実際に歯科医院を訪れた、全身疾患があり、さ時間とともに変化しますが、ヒトも加齢とともに変化し、まざまな薬剤を服用している患者さんについて、どこが徐々にあるいは突然に障害が発生し、最後には死を迎えまチェックポイント(問題点)で、どのように対応すれば、す。そのプロセスはヒトにより異なりますが、「健常」だっ安全に、かつ患者さんに安心してもらえる歯科診療が実現た患者さんが、いつの間にか重篤な全身疾患を診断され、できるのかを学びます。その方法として、比較的容易に、投薬が始まるのはごく自然な流れです。かつ臨床に即した知識を身につけることができるケースス もし、自分が担当している患者さんが、そのようになっタディ方式で行います。歯科診療で問題となることが多いた時はどのように対応すべきでしょうか。さらに、歯科医全身疾患をもつ症例を検討することにより、全身的偶発症院受診時に異常が見つかった時には、どのように対応すれを予防するためのリスクマネジメントについて学んでいきばよいのでしょうか。ましょう。26P026-038_DH10_toku1.indd 26APPE_P026-038_DH10_toku1.p1.pdfケーススタディ方式で学ぶ      の      の有病者対応チェックポイントチェックポイントDH10_uroku.indd把握できる患者情報整理用カード全身のリスクをDL付録とじ込み報整理にお役立てくださいをダウンロードして患者さんの情本シートをコピーまたはPDF版使い方 ﹇監修﹈大渡凡人患者情報整理用カード/   /治療歯式[監修]大渡凡人 九州歯科大学あんしん科(障害者歯科)病院教授・歯科医師身長体重収縮期血圧拡張期血圧脈拍数cmkgmmHgbpm薬剤M1M2M3M4M5M6M7日付時刻患者氏名ID男性  女性経口抗凝固薬抗血小板薬薬剤アレルギーSpO2整  不整M8M9M10病歴プロブレム(問題点)例:初診時の血圧が190/76mmHgであった。リスクマネジメント例:内科受診していただき、降圧薬により<140/90mmHgになったら歯科診療を開始する。年齢歯科衛生士#1#2#3#4#52024/09/041417P1P2P3P4P5歯科衛生士2024年10月号とじ込み付録 ©QPCColumn1生体情報モニタ 高齢者の歯科診療を安全に行うには、以下のような対応が必要です1。①病歴聴取などにより患者さんの疾患、薬剤、フレイルなどを明らかにします。②バイタルサインを測定し、異常がないかを確認します。バイタルサインとは体の重要な生理的機能を数値で表したものです。古典的には血圧、脈拍、体温、呼吸数をいいますが2、今では経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)も含みます3,4。③医師から正確な情報を得ます(コンサルテーション)。そして、これら①~③の情報を総合して、予定する歯科診療を行った場合に、どのような全身的偶発症が、どの程度の確率で起きるか、というリスクを予測します。そのうえで、そのリスクを低下させるために必要なリスクマネジメントを考え、実行します。 さらに、もうひとつ重要なことがあります。それは、診療中に突然起きた異常を早期に発見し、対応することです。これを実現するためには、「生体情報モニタ」という装置が有用です(図1)5。この装置は先に述べたバイタルサインの計測でも役に立ちます。 バイタルサインの異常値は、循環器や呼吸器(など)になんらかの異常が発生していることを示します。また、バイタルサインは重篤な全身的偶発症に先駆けて変化する指標でもあります6。そこで、このバイタルサインをモニタリングすることにより、患者さんの隠れた異常、たとえば高血圧や不整脈などを発見し、治療中の全身的偶発症に先行する異常を早期に発見して、リスクや被害を最小限にすることが可能になります。生体情報モニタはバイタルサインをモニタリングする「ツール」として有用です。生体情報モニタは高価ではありますが、安全の確保のために院長と購入を相談されるのもよいのではないでしょうか。生体情報モニタ図1 生体情報モニタの1例治療前に血圧のカフとパルスオキシメータプローブを大渡凡人Tuneto OWATARI九州歯科大学あんしん科(障害者歯科)病院教授・歯科医師装着し、血圧測定間隔を2.5~5分位に設定する。モニタが自動的に血圧、脈拍数を計測してくれるので、異常値が出ないことを確認しながら、診療を進める。とじ込み&DL付録全身のリスクを把握できる患者情報整理用カード患者さんの基本情報をまとめて管理するためのカードです。Illustration:中川視保子安全な歯科治療を行うためにご活用ください。October 2024 vol.48272024/09/11 9:24P026-038_DH10_toku1.indd 27APPE_P026-038_DH10_toku1.p2.pdf2024/09/11 9:24Illustration:熊本奈津子〈引用文献〉1.WHO. Chronic obstructive pulmonary disease (COPD). https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/chronic-obstructive-pulmonary-disease-(copd)(2025年4月3日アクセス)2.The Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease (GOLD). GLOBAL STRATEGY FOR PREVENTION, DIAGNOSIS AND MANAGEMENT OF COPD:2025 Report. https://goldcopd.org/2023-gold-report-2/(2025年4月3日アクセス)3.Chen CZ, et al. Life expectancy (LE) and loss-of-LE for patients with chronic obstructive pulmonary disease. Respir Med. 2020 Oct;172:106132. PMID 329058914.Ahmadi Z, et al. Long-Term Oxygen Therapy 24 vs 15 h/day and Mortality in Chronic Obstructive Pulmonary Disease. PLoS One. 2016 Sep 20;11(9):e0163293. PMID 276494905.大渡凡人,植松宏,海野雅浩.高齢者歯科外来患者の既往疾患と初診時血圧の関連.日歯麻会誌. 2000;28(2):195-203.6.Whelton PK, et al. 2017 ACC/AHA/AAPA/ABC/ACPM/AGS/APhA/ASH/ASPC/NMA/PCNA Guideline for the Prevention, Detection, Evaluation, and Management of High Blood Pressure in Adults:Executive Summary:A Report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Clinical Practice Guidelines. Hypertension. 2018 Jun;71(6):1269-324. PMID 29133354大渡凡人九州歯科大学 特任教授・歯科医師読者の皆さんからいただいた質問に、各特集・TOPICの著者の先生方に答えていただく毎年恒例の人気企画。今回は、2024年下半期(10~12月号)の記事への回答をお届けします。(編集部)Q1A1HOTの対象は重症あるいは非常に重症の患者さんであり、生命予後は不良とされています。ケーススタディ方式で学ぶ有病者対応のチェックポイントGOLD3、4の患者さんの生命予後は不良で、健康人と比較して、余命は平均で9.3年短くなるという報告があります3。 COPDの治療には、気管支拡張薬やステロイドが用いられる薬物療法と在宅酸素療法(home oxygen therapy:HOT)が含まれる非薬物療法があり、HOTの対象となるのは、血液中の酸素(分圧)が正常の半分近くまで低下してしまい、そのままでは日常生活が困難な重症の低酸素状態の患者さんです。ガイドラインではGOLD3、4の患者さんがHOTの対象となることが多いといえます。 このような重症の低酸素状態の患者さんに1日15時間以上の酸素投与を行うと、生存率を高められることが明らかにされています。しかし、前述したように、HOTの対象となる重症のCOPD患者さんは、もともと生存率が低く、HOTにより改善が見込めたとしてもなお死亡率は高く、平均生存期間は2年未満という報告もあります4。 このように、HOTの対象となった患者さんは残された時間が短いことを十分に考慮して歯科診療計画を立てなければなりません。全身疾患があり、さまざまな薬剤を服用している患者さんに、どのように対応すれば安全に、そして安心して歯科治療を受けてもらえるか、実際のケースをもとにポイントを教えてもらいました。TOPIC 慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)は、複雑で死亡率の高い疾患です。WHOは、COPDは世界で4番目に多い死亡原因であり、2021年には350万人が死亡し、世界全体の死亡者の約5%を占めたと報告しています1。 COPDの世界的なガイドラインは、The Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease(GOLD)2と呼ばれ、重症度により軽度(GOLD1)、中等度(GOLD2)、重症(GOLD3)、非常に重症(GOLD4)に分けられています(もう1つの基準もありますが、ここでは割愛します)。このうち、92慢性閉塞性肺疾患(COPD)により在宅酸素療法(HOT)が導入されている患者さんの生存率が低いのはなぜですか? 10月号P.37にて「COPDによりHOTが導入されている患者さんの生存率は低い」とありましたが、具体的に知りたいです。 読者が本当に聞きたい

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