?QA こと、全部答えます。2024年下半期2〈引用文献〉7.大渡凡人.全身的偶発症とリスクマネジメント 高齢者歯科診療のストラテジー.東京:医歯薬出版,2012:66-84. 以上は、初診時血圧による内科紹介の基準です。しかし、高齢者では初診時にこの基準に該当しなくても、治療中に血圧が急上昇することはよくあります。このような場合は、図1のフローチャートに基づいて判断しています。 患者さんへの説明では、できるだけ「客観的・医学的」に高血圧の危険性(脳卒中、狭心症、心筋梗塞、腎不全などのリスクが上昇し、歯科治療においても血圧上昇による脳卒中が起きた事例がある、など)を説明します。その際は、「降圧薬を飲むだけの高血圧治療は手術などを必要とする疾患に比べたら負担は小さい」こと、「長い目で見たら、健康な人生を送るうえで必ず役に立つ」ことを強調しています。*高血圧緊急症の可能性のある症状には(血圧上昇に加えて)頭痛、めまい、意識レベルの変化、息切れ、胸痛、嘔吐、視覚変化などがある。ありなし※もし経過観察中に症状*を訴えたら……なし(血圧低下)あり10月号P.29にて「180mmHg超えの方への内科受診の促し」について紹介されていましたが、具体的な数値基準はありますか? また、高血圧の危険性の説明は具体的にどのようにしていますか? 大渡凡人九州歯科大学 特任教授・歯科医師 十分なエビデンスがないため難しい問題ですが、ここでは筆者の経験をもとに解説いたします。 高齢者は、加齢と白衣効果などにより収縮期血圧が高くなります。筆者の調査5では高齢歯科患者の初診時における収縮期血圧(平均)は、143(SD 21)mmHgでした(すなわち、「平均値」がすでに高血圧基準を満たしていた、ということです)。このため、高血圧基準(≧140/90mmHg)で線引すると、半数以上の高齢者を内科受診させなければならず、現実的ではありませんし、コストに対するベネフィットも非常に低いといえます。一方、重症高血圧として≧180/110mmHg、高血圧危機として≧180/120mmHgが提示されています6が、高齢者はこのような高い血圧を示すことが少なくありません。 これらの理由により、筆者は初診時に≧180/110mmHgの高齢患者さんは内科受診を勧めてきました7。これまで数万人以上の高齢歯科患者の対応を行ってきましたが、血圧上昇による脳卒中など重篤な全身的偶発症を経験したことはありません(ただし、これはあくまで筆者の経験であり、「十分なエビデンスがあるわけではない」ことにご注意ください)。II度高血圧である、160-179/100-109mmHgの患者さんも内科受診を勧めてもよいのですが、紹介患者数はかなり多くなります。Q2内科受診を勧め、説明時は客観的・医学的に危険性を伝えています。93June 2025 vol.49A2筆者は≧180/110mmHgであれば帰宅可能内科受診を指示する疼痛などの原因があれば対応、並行して副交感神経緊張法(深呼吸など)を実施高血圧緊急症の可能性のある症状*119番もしくは医療機関に連絡・必要なら搬送する≧180/110mmHgが持続治療を中止15~30分経過観察≧180/110mmHgが持続医療機関に連絡・指示に従う図1 治療中の高血圧への対応高血圧の患者さんにおいて内科受診を勧めるべき基準が知りたいです。また、危険性の説明は具体的にどうしていますか? こと、全部答えます。
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