85言葉や態度は、思っている以上に“伝わる”から。TOPICJuly 2 0 25 v ol.4 9Illustration:ツキシロクミ枝広あや子Ayak o EDAH IRO東京都健康長寿医療センター研究所自立促進と精神保健研究チーム専門副部長・歯科医師 皆さんにとって、「認知症」はまだまだ“遠い世界”でしょうか。 2023年に「認知症基本法(正式名称:共生社会の実現を推進するための認知症基本法)」が成立し、社会全体で認知症とともによりよく生きる未来づくりが始まっています。歯科医院でも、「認知症の患者さんを支える」という視点が、ますます求められるようになってきました。一方で、認知症の人を支えるご家族から、こんな声を聞くことがあります。「大きな声で行動を制止されたとき、母と私は“また怒られた”と落ち込んでしまった。スタッフの人の表情から、まるで“迷惑だからもう来ないでほしい”と言われたように思った。もう行かない」「診療中に不安で立ち上がった父を制止されたときに、父は驚いたようで、せっかく歯科医院に来たのに治療ができない状態になってしまいました」 私たちの言葉や態度は、思っている以上に患者さんに大きな影響を与えます。認知症の患者さんと向き合ってそんな態度や言葉が出てしまったとき、自分のなかにも生まれた戸惑いや不安に気づくはず。あなたの感情はどこからやってきたのだろう。知らないから怖い。知れば支えられるかも。「どうしたら、この方に安心してもらえるかな」 暖かなまなざしを向けるには、何が必要でしょう。 今回は、一緒にちょっとだけ、認知症の人が体験している世界をのぞいてみましょう!“わかったつもり”になっているかも。視点を変えたら見えてくる認知症患者さんの「気持ち」
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