歯科衛生士 2025年9月号
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5件制度への反映とともに、使いやすい剤型への   改良が普及の後押しに制度への反映とともに、使いやすい剤型への   改良が普及の後押しに これまで、どのような研究結果をもとに歴史をザッと見! 日本では、1949年に厚生・文部両省から「弗化ソーダ局所塗布実施要領」が、さらに1966年に厚生省から「弗化物歯面局所塗布実施要領」が通達され、フッ化物歯面塗布の普及が図られてきました。 歯科疾患実態調査(厚生労働省)では、1969年以降、1~14歳を対象にフッ化物歯面塗布経験の有無を調べています。15歳未満の塗布経験者の割合は調査回ごとに増加し、2011年には63.6%となりました 6)。100908040506070302010196901993198719811975(%)6.011.222.331.538.2(年)201620112005199942.059.263.662.51~14歳のフッ化物歯面塗布経験者の割合フッ化物歯面塗布によるう蝕予防の有効性が初めて報告された フッ化物歯面塗布によるう蝕予防の有効性は、Cheyne7)やBibby8)により、1942年に初めて報告されました。その後、Knutsonらの一連の研究によって、2%フッ化ナトリウム(NaF)溶液による歯面塗布法が確立されました 9)。しかしながら、中性の2%NaFは歯との反応性が低いため、1週間に1~2回の塗布間隔で、2週間以内に4回塗布してはじめて1単位(1回分)となることから、塗布回数が多くなるという欠点がありました。8%フッ化第一スズ(SnF2)溶液による歯面塗布の有効性が報告された 1950~1960年代にMuhlerらは、煩雑な連続塗布の必要がない8%SnF2溶液による歯面塗布の有効性を報告しました 10,11)。しかしながら、歯面や修復物に着色が生じたり、味が悪かったり、溶液が不安定で塗布のたびに作製し直さなければならないという欠点がありました。68P067-075_DH03_Fluoride.indd 68文献でひも解くヒストリーフッ化物歯面塗布の考え方が変化してきているか、年表でチェックしてみましょう。Brudevoldらがリン酸酸性フッ化ナトリウム(APF)溶液の塗布法を開発した 1960年代になると、Brudevoldらが、左記の欠点(塗布回数、着色、味)を改善したリン酸酸性フッ化ナトリウム(APF)溶液の塗布法を開発しました。中性である2%NaFにリン酸を加えて酸性にし、歯との反応性を高めたため、1回の塗布で1単位となり、その簡便さから世界的に普及しました。これによってフッ化物溶液を綿球(または綿棒)で塗布する一般法とトレーで塗布するトレー法が確立しました。その後ジェル剤が開発され、さらにフォーム(泡)剤も加わり、溶液の製剤はあまり利用されなくなりました 12)。母子健康手帳に初めて「う蝕予防に有効な手段であるフッ化物(フッ素)の利用」について記載された 2012年の母子健康手帳の改正によって、保護者の記録【1歳6ヵ月の頃】【3歳の頃】に、「歯にフッ化物(フッ素)の塗布やフッ素入り歯磨きの使用をしていますか。」という質問項目が記載されました。選択欄において「はい」が先に配置されていることは、フッ化物歯面塗布を受けることが望ましいことを示しています。健康日本21がスタートし、フッ化物歯面塗布とフッ化物配合歯磨剤の普及に関する目標が設定された 2000年に、健康寿命の延伸とQOLの向上を目指した「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」がスタートしました。歯の健康の目標では「3歳までにフッ化物歯面塗布を受けたことのある者の割合の増加(目標値:50%以上)」と「学齢期におけるフッ化物配合歯磨剤使用者の割合の増加(目標値:90%以上)」というフッ化物局所応用の目標が設定されました。フッ化物バーニッシュが開発された Schmidt13)は、唾液の存在下で歯の表面に付着する可能性のある天然のロジンベースのNaFを塗布する方法を発表しました。この製品はさらに開発され、Duraphat ®として登録されました。日本では、1981年に「Fバニッシュ歯科用5%(ビーブランド・メディコーデンタル)」が販売開始され、現在、他にクリンプロ TMホワイトバーニッシュF(スリーエムジャパン)、エナメラスト(ウルトラデントジャパン)が利用できます。フッ化物歯面塗布処置の評価の見直し 2016年の診療報酬改定で、う蝕の重症化を予防する観点から、歯科疾患管理料を算定したエナメル質初期う蝕に罹患している患者に対して、主治の歯科医師またはその指示を受けた歯科衛生士がフッ化物歯面塗布処置を行った場合の評価が新設されました。また、う蝕多発傾向者、在宅等療養患者に対するフッ化物歯面塗布処置も充実されました。Check1で深掘り!フッ化物ジェルの塗布がう蝕予防に有効であることが示された Marinhoら 14)によると、フッ化物ジェルによるD(M)FSの抑制率は28%(95%信頼区間:19~37%、P <0.0001)でした。また、2015年に更新されたもの 15)では、「フッ化物ジェルを塗布すると、永久歯と乳歯の両方でう蝕が大幅に減少する。処置中に誤ってジェルを飲み込むことによる潜在的な悪影響に関する情報はほとんど見つからなかった」と結論づけられています。Fバニッシュ歯科用5%エナメラストクリンプロ TMホワイトバーニッシュFCheck 2で深掘り!フッ化物バーニッシュの塗布がう蝕予防に有効であることが示された Marinhoら 16)によると、フッ化物バーニッシュによるD(M)FSの 抑 制 率 は46%(95%信 頼 区 間:30~63%、P <0.0001)でした。また、2013年に更新されたもの 17)では、永久歯と乳歯の両方で、フッ化物バーニッシュの高いう蝕予防効果を示唆しています。2022/02/10 9:20P067-075_DH03_Fluoride.indd 69March 2022 vol.46692022/02/10 9:20194219501963201220002016200219642002(文献6より改変) フッ化物バーニッシュ(Fluoride varnish)1 - 3 は、欧米において歯科診療所ならびに地域保健の現場で長年使用されてきました。とくにカリエスリスクの高い部位や歯面に、通常は 3 ヵ月あるいは 6 ヵ月間隔で塗布することでフッ化物が供給されます。フッ化物バーニッシュは高濃度フッ化物を含有し、歯面で硬化して長期間停滞するように作られています。 アルコール懸濁液に 5 % のフッ化ナトリウム(NaF、22 , 600 ppm F)を含有し、唾液と接触すると硬化するレジンを含んでいます。このような高濃度のフッ化物が作用すると、局所にフッ化カルシウムが形成すると考えられ、フッ化物を徐放する貯蔵庫として機能します 4。 フッ化物バーニッシュは、小さなブラシ、シリンジなどを使用して、1 年に 2~ 4 回の頻度で塗布されます 5。あらゆる年齢層に使用されますが、とくに小児や青年のう蝕予防のために使用され、高齢者の露出した歯根面にも塗布されます。 2013年に発表されたコクランレビュー 6 では、永久歯と乳歯の両方で、フッ化物バーニッシュの高いう蝕予防効果を示しています(表 1)。また、フッ化物バーニッシュによる歯根面う蝕の予防効果に関しても明らかになってきています 7 - 9。表1 フッ化物バーニッシュによるD(M)FS、D(M)FT、d(e/m)fsの抑制率の変量効果メタアナリシスD(M)FSD(M)FTd(e/m)fs分析永久歯、乳歯ともにフッ化物バーニッシュによる高い抑制率が示された。研究数抑制率13件10件95 % 信頼区間P 値30~57 %P <0 .000111~76 %P=0 .0124~51 %P <0 .0001異質性の検定Tau2 =0 .04;Chi2 =48 .38 ,df=12(P <0 .0001);I2 =75 .19 %Tau2 =0 .1;Chi2 =28 .82 ,df=4(P <0 .0001);I2 =86 .12 %Tau2 =0 .02;Chi2 =21 .83 ,df=9(P=0 .01);I2 =58 .77 %8443 %44 %37 %ほかのフッ化物局所応用製剤とくらべてどのような特長があるか、国内外の歴史とともにおさえておきましょう。もっと知りたい方は『歯科衛生士』2022年3月号P.67~をcheck!歯面に長く留めることができる高濃度フッ化物P A R T 1濃度の高さだけじゃない?を知る!

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