歯科衛生士 2025年11月号
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症例をシェアして、ステップアップ!誌上初診時の患者の基本情報年齢、性別55歳(2005年初診時)、女性主訴左上の前歯が動いている歯科的既往歴痛みが出た時だけ受診。5767は欠損のままで補綴装置の使用経験はなし全身的既往歴高血圧症、慢性腎臓病服用薬血圧降下剤(アダラートCR錠20mg、セロケンL錠120mg、ニューロタン錠50mg)、高脂血症薬(リポバス錠5)村上祥子□□Shoko Murakami白石歯科歯周再生□□□□□[福岡県]歯科衛生士●臨床経験年数:26年目●1999年九州歯科大学附属歯科衛生学院卒業●46歳●勤務形態:常勤●所属学会・スタディグループ:日本臨床歯周病学会(認定歯科衛生士、指導歯科衛生士)●医院紹介:ボーダーライン上のケースはもとより、他院では抜歯となるような場合でも、可能な限り保存を心がけた治療を目指している。歯周病専門医の歯科医師のもと、長期にわたり患者との信頼関係を大切にしている医院。今回症例を紹介してくれるのは……[キーワード]長期SPT、慢性腎臓病、QOL慢性腎臓病の治療と並行してSPTを継続している20年経過症例はじめに 患者さんの生活の質(Quality of Life、以下QOL)を向上させることは、歯科医療の重要な目標の1つであり、歯周治療は患者さんの健康とQOLを向上させるための重要な手段ではないかと考えます。そのためには、患者さんが初診時に抱いている主訴を改善するだけでなく、歯周基本治療を経て、その後の経過観察や管理を長期的に行っていくことが必要です。それ故に、私たち歯科衛生士は患者さんと生涯にわたりお付き合いすることになるわけですが、ライフステージごとに環境や体調の変化に直面することがあります。その都度、患者さんのバックグラウンドや健康状態を理解し、それに基づいたアドバイスを提供することが重要で、一人ひとりのニーズやライフスタイルに応じた個別対応が求められます。 今回、全身疾患を抱えてご自分の口腔内環境を悲観し、歯科受診を躊躇してしまっていた女性が、現状を理解し、必要な口腔ケアを日常に取り入れてもらうことで全顎的な歯周治療に取り組まれました。初診からの約20年間の経過をご報告します。全身疾患により服用もある患者さん 患者さんの初診は2005年で、当時55歳の女性です。左上の前歯が動いていることを主訴に来院されました。数ヵ月前から1の動揺と3ー2の冷水痛を自覚していて、ブラッシング時に歯肉からの全体的な出血をともなう状態とのことでした。非喫煙者で、全身的既往歴として高血圧症、慢性腎臓病に罹患しており、当時の服用薬として血圧降下剤(アダラートCR錠20mg、セロケンL錠120mg、ニュー99November 2025 vol.49

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