歯科衛生士 2025年12月号
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症例をシェアして、ステップアップ!誌上初診時の患者の基本情報年齢、性別41歳(2023年初診時)、男性主訴右上・左上の奥歯がしみる歯科的既往歴1インプラント、隣接面と上顎前歯部にう蝕治療の経験あり全身的既往歴精神疾患(うつ病)、糖尿病(HbA1c:初診時6.2、現在は食事療法にて治療中)服用薬パキシル錠20mg(パロキセチン塩酸塩水和物)喫煙歴1日20〜40本(ヘビースモーカー)。入室時にはいつもタバコの臭いが部屋に充満した職業障害者施設認定の作業所にてデスクワーク。2025年退職後、精神内科、職場復帰支援プログラム(リワーク)に通院中鈴木 歩□□Ayumi SuzukiBRISTO DENTAL CLINIC[埼玉県]歯科衛生士●臨床経験年数:11年目●2015年高崎歯科衛生専門学校卒業●32歳●勤務形態:常勤●所属学会・スタディグループ:日本顕微鏡歯科学会(認定歯科衛生士)、日本歯周病学会、日本臨床歯科CADCAM学会(役員)、スタディーグループINFINITY(講師)●医院紹介:デジタルツールやマイクロスコープなど最新の設備が整い、予防から全顎治療まで幅広く診療を行うクリニック。今回症例を紹介してくれるのは……[キーワード]精神疾患、カウンセリング、歯周基本治療、禁煙支援精神疾患を患う広汎型慢性歯周炎の患者に歯周治療を行い、禁煙に成功した症例はじめに 厚生労働省の令和5年の調査によると、精神疾患を有する患者さんは外来・入院を含めて約603万人にのぼり、これは国民のおよそ20人に1人に相当します1。歯科医院においても、こうした患者さんは少なくないため、医療者側は通院を継続できるように支援することが重要です。 当院はマイクロスコープやIOSを活用し、予防から治療までクリニック内で連携を取りながら、患者さんの想いに寄り添う診療を心がけています。本稿では、治療に消極的で、かつうつ病を抱える広汎型慢性歯周炎患者に対し、歯周基本治療と並行して心理的サポートを行い、さらに禁煙支援を実施した結果、禁煙に成功した症例について報告します。しみる症状をきっかけに急患で来院 2023年、患者さんは右上・左上臼歯部の知覚過敏を主訴に当院を訪れました。応急処置を希望しての来院でしたが、パノラマエックス線検査(次ページ図1)の結果、知覚過敏の原因として歯肉の炎症、強いブラッシングによる歯肉退縮、根面う蝕、そしてくいしばりといった複合的な要因が考えられました。 そのなかでも、症状が著しい7のう蝕に対しては、当日にインレー修復が行われ、頬側面にはティースメイト® ディセンシタイザー(クラレノリタケデンタル)による処置が施されま97December 2025 vol.49

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