Viet Anh Nguyen, Thuy Anh Nguyen翻訳:編集部キーワード 前歯のトルク喪失、アライナー、ハイブリッド歯科治療、舌側矯正装置、前突Journal of Aligner Orthodontics 日本版 | 2024 vol.4 issue 6Viet Anh Nguyen, DDS, MS Private Practice, Viet Anh Orthodontic Clinic, Hanoi, Vietnam Thuy Anh Nguyen, DDS Private Practice, Viet Anh Orthodontic Clinic, Hanoi, Vietnam Correspondence to: Dr Viet Anh Nguyen, Viet Anh Orthodontic Clinic, Nam Tu Liem, Hanoi 100000, Vietnam. Email: bsvietanhniengrang@gmail.com アライナー型矯正装置と舌側矯正装置は、それぞれ異なる特徴とバイオメカニクスをもつ審美的な装置であるが、治療効率を最大化するために組み合わせて用いることもできる。矯正歯科治療を固定式装置、中でも舌側矯正装置を用いて行う場合、力が歯の舌側にかかるため、スペース閉鎖中に切歯の舌側傾斜が頻繁に発生する。本症例報告では、上顎前突を主訴とする骨格性Ⅱ級について解説する。本症例の治療計画では、切歯を後方移動させるスペースをつくるために第一小臼歯4歯を抜歯した。その後舌側矯正装置を用いた18か月間にわたる治療が終了した後、事前にトルクを組み込んだアーチワイヤーを使用したにもかかわらず、スペース閉鎖中に前歯部のトルクの大幅な喪失が認められた。これに対し、アライナーを用いてトルクを喪失した前歯部を改善することとした。6週間にわたるアライナー矯正治療の結果、上下顎切歯のトルクはいずれも大幅に改善された。このことからアライナーは、固定式装置による矯正歯科治療後の切歯のトルク喪失を修正するために有用であるといえる。 アライナーと舌側矯正装置は、それぞれ異なる特性とバイオメカニクスをもつ審美的な装置である。可撤式のアライナーは、固定式の舌側矯正装置による継続的な力とは異なり断続的な力をかけることができる。さらに、アライナーには口腔衛生の維持管理が容易という利点があるが、舌側矯正装置にはない食事時に取り外さなければならないという欠点がある。 しかしながら、アライナーと舌側矯正装置には複数の共通点がある。いずれの装置も、最適な矯正歯科治療用セットアップに基づき、アライナーシークエンスの作成や舌側歯面へのブラケットの配置、舌側に設置するアーチワイヤーの形成が行われる。またいずれの装置を用いても、口腔衛生の改善と唾液量の増加により、治療を受けた患者における白斑病変の発症率が低下する1-3。さらに、小臼歯抜歯をともなう歯槽性前突は、スペース閉鎖に関するバイオメカニクスが複雑であるため、通常アライナーと舌側矯正装置のいずれでViet Anh Nguyen23症例報告緒言舌側矯正治療後にトルクが喪失した切歯をアライナーで改善した症例
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