JAO[Journal of Aligner Orthodontics]日本版 2024年No.6
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村松裕之 MURAMATSU Hiroyuki, D.D.S., Ph.D. 市川矯正歯科医院 〒192-0904 東京都八王子市子安町4丁目6−1 Phiビル 連絡先 E-Mail: mail@shinwa.or.jpJournal of Aligner Orthodontics 日本版 | 2024 vol.4 issue 6 「正面頭部エックス線規格写真」(Postero-Anterior Cephalogram、以下正面セファログラム[別名:PAセファログラム/後前セファログラム]、図1)1は、1931年、頭蓋の成長発育研究を目的として、側面セファログラムとともにBroadbentによって発表されたエックス線撮影法である2。正面セファログラムを用いた対称性に関する最初の臨床研究は、副鼻腔の非対称性を研究した1918年のDavisまでさかのぼる3。 このように歴史があるにもかかわらず、臨床の現場で正面セファログラムが脇役扱いになっているように感じるのは、規格写真といえども、撮影時に起こりやすい頭位の前転後転等による影像のばらつきが問題となることや、Angle分類のような不正咬合分類法がないこと、正面セファログラムを用いた歯の移動計画において、特に名のついたテクニックが存在しないことなどが理由に挙げられるであろう。 側面セファログラムを用いると、軟組織・硬組織の変化に直結する分析法や目標とする歯の移動方向や移動量を導きやすいものの、ひとびとが日常的に見て認識する「顔」は横ではなく、正面あるいは斜め方向から見た「顔」である。その意味から正面セファログラムの重要性は、より広く認識されるべきと考える。図1 正面セファログラムおよびセファロトレース1宮下邦彦先生(東京都開業)による撮影およびトレースで、左右対称性に優れた頭蓋を細心の注意を払って撮影した影像である。宮下先生の豊富な知識と多くの経験を積んだ眼から、解剖学的構造をていねいに再現したトレースの美しさが際立っている。こうしたトレースが本来的な作業であることを認識したうえで、本稿では、臨床的に簡略化したトレースを扱うことを心に留めていただきたい89日本版オリジナルページ [連載] 矯正分析に強くなる ベーシックを学び、診断力をつける・伸ばす村松裕之 [東京都・市川矯正歯科医院]第12回正面セファログラム(正面頭部エックス線規格写真)[1]

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