JAO[Journal of Aligner Orthodontics]日本版 2025年No.1
2/7

キーワード サージェリーファースト法、アライナー矯正治療、骨格性Ⅲ級、下顎枝垂直骨切り術Journal of Aligner Orthodontics 日本版 | 2025 vol.5 issue 1治療にて歯性の不正咬合を改善するというアプローチ「オルソファースト法」が一般的であった。しかし、このアプローチは治療期間が長期に及ぶことや、術前の矯正歯科治療中にデンタルコンペンセーションを改善するために、一時的に反対咬合が強くなることで審美性や咬合状態が悪化する。こうした課題に対して近年注目されているのが、まず最初に顎矯正手術を行う「サージェリーファースト法」である(次ページ表1)。 本稿では、骨格性Ⅲ級不正咬合の患者にサージェリーファースト法を適用し、術後の矯正歯科治療をアライナー単独で行った症例について報告する。本症例では、アライナー矯正治療により患者のQOLを損うことのない審美的かつ効率的な治療を目指した。その治療経過と結果を詳細に報告し、サージェリーファースト法とアライナー矯正治療の併用がどのようなメリットを患者にもたらすかについて検討したい。 サージェリーファースト法は、従来のオルソファースト法とは異なり、治療の最初に顎矯正手術を行うアプローチである。治療の初期段階で下顎前突の原因と69斎藤秀也 SAITO Shuya, D.D.S. 櫛引翔太 KUSHIBIKI Shota, D.D.S. 銀座さいとう矯正歯科 〒104-0061 東京都中央区銀座5-4-7 銀座サワモトビル3F林 信 RIN Shin, D.D.S. 新山 宗 NIIYAMA Takashi, D.D.S. 北海道がんセンター 口腔腫瘍外科 〒003-0804 北海道札幌市白石区菊水4条2-3-54市岡勇一郎 ICHIOKA Yuichiro, D.D.S. 横浜さいとう矯正歯科 〒220-0004 神奈川県横浜市西区北幸1-6-1 横浜ファーストビル15F千田百合絵 SENDA Yurie, D.D.S. 名古屋さいとう矯正歯科 〒450-0002 愛知県名古屋市中村区名駅4-8 エニシオ名駅7F連絡先 斎藤秀也 E-Mail: shu-shu0720@outlook.jp日本版オリジナルページ症例報告 骨格性Ⅲ級不正咬合は一般に「下顎前突」として知られ、下顎が上顎に対し突出している状態を指す。この状態は歯列不正のみならず患者の顔貌に大きく影響を与え、下顎骨の過成長や形態の異常に起因するため、心理的な負担を引き起こすことも少なくない。骨格性Ⅲ級不正咬合の矯正歯科治療には非外科と外科があるが、重度の症例では非外科単独での改善が難しい場合が多く、顎矯正手術の介入が求められる。 従来、骨格性Ⅲ級不正咬合の治療では、まず矯正歯科治療によって歯列や咬合を調整した後、顎矯正手術にて骨格性の不正咬合を改善し、術後は再度矯正歯科はじめにサージェリーファースト法とは斎藤秀也斎藤秀也、林 信、新山 宗、櫛引翔太、市岡勇一郎、千田百合絵サージェリーファースト法と アライナー矯正治療による 骨格性Ⅲ級不正咬合の改善

元のページ  ../index.html#2

このブックを見る