開咬治療について アライナー矯正治療は開咬症例に向いているとよくいわれます。皆さんはどのような治療計画を立案し、ClinCheckを作成しているでしょうか。アライナー矯正治療を行うにあたっては、マルチブラケット矯正治療の違いやどのようなメカニクスによって改善していくのかについて、「logical」に理解する必要があると思います。そうして初めて、効率的でより良い治療が可能になると考えます。本連載では、上顎前突と下顎前突の開咬症例を供覧しながら解説していきます。過蓋咬合治療について アライナー矯正治療による過蓋咬合の改善は難しいといわれていますが、私は第一に治療開始前の診断が重要であると考えます。抜歯/非抜歯の判断を間違えてしまうと治療が思わぬ方向に進んでしまいますし、リカバリー治療で途中から立て直すことが困難になることすらあります。できるだけ治療期間が長くならないようにするためには、少しでも多く自分の知識を増やし、間違った方向へ進まないよう注意しながら慎重に治療を進めていくことが必要となります。開咬治療について 小児向けアライナー矯正治療と通常のアライナー矯正治療の大きな違いは、やはり「成長」ではないでしょうか。そして、この垂直的な問題は、舌位や咬合平面、下顎下縁平面などを多角的にとらえる必要があります。「成長を科学する」ことは非常に困難ですが、InvisalignFirstを用いて小児患者に対する矯正歯科治療を行っている立場から、開咬治療について先人たちが報告してきたことをもとに、「logical」に、そしてときには「narrative」に私見を述べたいと思います。過蓋咬合治療について 過蓋咬合を治すとなると、成人治療と同様に臼歯部の挺出、前歯部の圧下が治療の肝になります。しかし、成長期の治療には成長があるゆえに、成人治療とまったく異なる治療動態を示すことがあります。成人では、臼歯部を挺出すると下顎頭の蝶番運動により下顎が後方回転することが知られています。しかし、小児向けのアライナー矯正治療においてはそのような変化は認められません。岡野先生、渡部先生とは違う、成長期特有の過蓋咬合の治療について情報を共有できればと思います。開咬治療について 最小限の移動量によって上下顎のアーチコーディネーションを行い、すでにある早期接触を除去することで、咬合接触のない部分の歯列を咬合させます。このアプローチは、追加アライナーによるディテーリングの際にも共通して行っています。このコンセプトを深く理解することが、すべてのアライナー矯正治療におけるディテーリングの高い精度と予測実現性を得ることにつながります。過蓋咬合治療について できる限り相対的な圧下を取り入れ、難度の高い移動を難度の低い移動にできるような最終位置で咬合させます。アライナー矯正治療中のリカバリー治療において、もっとも深刻な状態になるリスクを抱えているのが過蓋咬合です。アライナー矯正治療での絶対的な圧下は難度が高く、TADs等の強固な固定源が必要となることが多くなります。アライナー単独による過蓋咬合の治療では、治療計画にできるだけ相対的な圧下の要素を含むことで、現実的な最終位置と学術的に理想とされる最終位置、つまり「real」と「ideal」のバランスを慎重に取っていく必要があると考えます。Journal of Aligner Orthodontics 日本版 | 2025 vol.5 issue 183それぞれの開咬 / 過蓋咬合治療の基本コンセプト渡部博之有田光太郎岡野修一郎
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