※3倍延長時図3 ボタンカット(a)、プレシジョンカット(b)。SUPER HEAVY170gf (6.0oz.)SH5 BrazilSH6 ThailandSH8 Koreaしたボタンにエラスティックを掛ける(図3)。ボタンの場合は力が主に犬歯に加わり、隣接する歯同士の圧縮力によって固定源の力が伝達されるため、歯間の隙間によってその力が弱まることが明らかとなっている。加えて、犬歯に設置したボタンからエラスティックにて牽引することで、犬歯には遠心方向への捻転や頬側へ転位する力も生じてしまうため、アタッチメントの設置は欠かせない。一方で、プレシジョンカットに掛けたⅡ級顎間ゴムは、固定源の力をアライナーによって直接伝達するため、ボタンに比べて固定源が強固であると報告されている4。 これらのことから、大きなオーバージェットを有するⅡ級1類症例の場合、上顎前歯の唇側傾斜が許容されないためより強い固定が必要であり、プレシジョンカットの使用が適している。しかし、Ⅱ級2類症例で上顎前歯の舌側傾斜をともなう場合は、前歯の唇側傾斜が望ましいため、犬歯にボタンを設置しⅡ級顎間ゴムを使用することが適切と考えられる5。 エラスティックの強さには一定の基準などがなく、治療中の犬歯・臼歯関係の変化をモニタリングしながら調整していく必要がある。筆者は、Ⅱ級顎間ゴムの場合はまず5mmのエラスティック(筆者が用いるのはトミーインターナショナル社の3/16インチ、MEDIUMあるいはHEAVY、表1)を使用し、犬歯・臼歯関係(A-P関係)をモニタリングしつつ、4mmあるいは6mmと使い分けながら遠心移動を進めていく。 また患者の来院時には、A-P関係だけでなく下顎前歯部の状態も確認する必要がある。Ⅱ級顎間ゴムを用いることで、下顎歯列が前方に移動する反作用が生じるためである(前ページ図2)。下顎歯列が前方に移動することでA-P関係の改善には有利にはたらくが、アライナーで下顎歯列が一塊となった状態で前方に移動するため、下顎前歯の歯根が前方へと押し出されて使用するエラスティックの強さ遠心移動中は下顎前歯部の状態に注意するLIGHT57gf (2.0oz.)MEDIUM85gf (3.0oz.)M3 GermanyM4 MexicoM5 RussiaM6 U.S.A.M8 ItalyHEAVY113gf (4.0oz.)H3 IndiaH4 SwitzerlandH5 SingaporeH6 JapanH8 SwedenabJournal of Aligner Orthodontics 日本版 | 2025 vol.5 issue 2日本版オリジナルページ表1 本症例で使用する口腔内用エラスティックの種別と名称(いずれもトミーインターナショナル社)牽引力※直径3mm (1/8")L3 Australia4mm (5/32")L4 Netherlands5mm (3/16")6mm (1/4")L6 China8mm (5/16")L8 Canada68
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