JAO[Journal of Aligner Orthodontics]日本版 2025年No.4
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Journal of Aligner Orthodontics 日本版 | 2025 vol.5 issue 4変換されたデータ同士をつなぎ合わせ、新しいワークフローや価値を生み出すこと。 例 ◦ 口腔内スキャン× CBCT 画像×咬合運動を重ねた「バーチャルペイシェント」でリスクを可視化する= 質的変革= 効率化デジタライゼーション(Digitalization)デジタイゼーション(Digitization)日本版オリジナルページ紙や石膏、フィルムを「 0 」と「 1 」のデジタルデータに変換する作業。 例 ◦口腔内写真を JPEG データに変える ◦石膏模型を STL データに変える50図 1 デジタイゼーションとデジタライゼーション。前者は効率化、後者は質的変革を指す。ところが臨床現場では両者がしばしば混同され、「口腔スキャナーを導入した=最新のクリニック」という早合点が起こりやすい。テや石膏模型は姿を消し、代わりにクラウドドライブのフォルダが患者ファイルを抱え込む―重量ゼロ、検索ワードひとつで一瞬にして情報を呼び出せる世界だ。 しかし、この20余年の進化で起こったことは、「紙と石膏をピクセルとボクセルに置き換えた」だけではない。本稿で述べる「真のデジタライゼーション」とは、単なる効率化ではなく、「データを新しい診断価値に変換し、治療精度と患者体験を質的に高める変革」を指す。言い換えれば、「デジタル=便利ツール」という発想を超え、アルゴリズムと臨床知を融合させ「まだ見ぬ歯科矯正学」を開拓する視点のことである(図 1)。 本稿ではまず、アナログ時代の苦労を振り返りつつ、デジタル化がわれわれの日常をどう変えたのか、そしてなぜ今こそ「診断コンテンツ」として再定義し直す必要があるのかを語ってみたい。かつての湿ったフィルムの匂いと、今日の無機質なクラウドサーバーの冷気。その温度差こそが、以下に紹介する「 7 つのキー」と「落とし穴」を理解する鍵になるだろう。 かつて「現像ガチャ」に一喜一憂していた若手医局員は、今、AI が吐き出す自動解析レポートを「よし、ここだけ微調整」とワンクリックする立場になった。では、そのワンクリックが生む恩恵とリスクは何か―読者の皆さんと一緒に考えていきたい。

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