JAO[Journal of Aligner Orthodontics]日本版 2025年No.4
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吉野智一 YOSHINO Tomokazu, DDS ステラ矯正歯科 〒341-0018 埼玉県三郷市早稲田5丁目7-13 連絡先 E-Mail: tomokazu0818@hotmail.com牧野正志 MAKINO Masashi, DDS まきの歯列矯正クリニック 〒276-0049 千葉県八千代市緑が丘1丁目2-19東洋リビング緑ヶ丘SKM 201 連絡先 E-Mail: makino.ortho@gmail.com日本版オリジナルページ メソッドプレゼンテーション Ⅲ級不正咬合(反対咬合)は、上下顎骨の前後的な位置関係の不調和により、上顎前歯部が下顎前歯部よりも後方に位置する咬合異常を示す不正咬合であり、その発生頻度は人種や年齢などにより大きく異なるが、一般に東洋人では高い傾向にあるとされる 1 。日本人の小児期から青年期にかけての発生頻度は、約 4 ~5 %前後と報告されている 2 。 Ⅲ級不正咬合の成因は骨格性、歯性、機能性に分類され、ほとんどの症例でこれらの成因が複合して存在している。また骨格性のⅢ級不正咬合では、単に下顎の前方突出だけでなく上顎骨の劣成長が併存している症例が多い 3 。日本人では頭蓋底の短縮や前顔面高の延長、下顎角の鈍角化などをともない、下顎骨が後下方へ回転していることも特徴である 4 。は じ め に─ Ⅲ 級 不 正 咬 合 に お け る 時 期 別 治 療 戦 略 の 重 要 性アライナー矯正治療戦略メカニクスから考える治療を成功に導く戦略体系(前編)Ⅲ級不正咬合に対する 時期別治療戦略吉野智一吉野智一(前編) 牧野正志(後編)61 キーワード Ⅲ級不正咬合、機能的マウスピース矯正装置、アライナー型矯正装置、成長期マネジメント、混合歯列期Journal of Aligner Orthodontics 日本版 | 2025 vol.5 issue 4 Ⅲ級不正咬合においては、患者の年齢や成長段階に応じた適切な時期別治療戦略が重要となる。これは、骨格的な問題が成長とともに進行・固定化しやすいため、早期の段階的なアプローチによって将来的な治療負担を軽減し、治療成功率を高めることが可能となるからである。 各成長段階を考えると、乳歯列期では口腔周囲筋機能のバランス改善や早期接触の除去を目的として主に機能的マウスピース矯正装置による早期介入が行われる。混合歯列期では、上顎骨の成長促進や歯列弓形態の改善を目的としてさまざな装置を用いた積極的な介入が必要となる。筆者は近年、混合歯列期におけるアライナーの使用が増えてきたと感じている。この時期は機能的な側面と機械的な側面でのアプローチが可能で、治療も複雑化する。そして永久歯列期では骨格的要素の改善には限界が生じるため、矯正歯科治療による歯槽性補償(カムフラージュ治療)や咬合の改善を中心とした戦略が求められる。本稿ではⅢ級不正咬合に関して、このような各成長段階における適切な治療介入の必要性と具体策を解説し、時期別治療戦略が成人矯正の成功にどのように寄与するのかを具体的に示していく。

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