ab 1 .乳 歯 列 期( 3 〜 6 歳 ご ろ )に お け る 治 療 戦 略日本版オリジナルページ62Journal of Aligner Orthodontics 日本版 | 2025 vol.5 issue 4図 1 乳歯列期における前歯部交叉咬合にともなう深い被蓋に対する早期治療介入例。a:初診時( 3 歳 4 か月男性)。乳犬歯間に反対咬合の深い被蓋を呈している。このような症例では永久歯への交換時期に自然治癒する可能性が低く、放置すると症状がさらに悪化する可能性があるため、乳歯列期の早期介入が必要であるb:プレオルソ タイプⅢを約 2年間( 5 歳3 か月時)使用した後の状態。反対咬合が改善され、良好で安定した咬合関係を獲得している 乳歯列期における前歯部交叉咬合は、骨格的な要因よりもむしろ口腔周囲筋の不調和や低位舌、口呼吸などの機能的要因が関与しており、歯性の前歯部交叉咬合であることが多い。実際の出生時にはほぼすべての乳児が骨格的にⅡ級傾向を示すため、この時期にみられるⅢ級不正咬合は「機能性反対咬合」としてとらえることが適切である。Ⅲ級不正咬合を引き起こす主な機能的要因としては、鼻呼吸不全が挙げられる。鼻呼吸不全によって舌が低位に位置すると、下顎前歯部が過度に唇側傾斜し、さらに上顎の正常な発育も妨げられる可能性がある。そのため、検査時には鼻呼吸が可能かどうかやアレルギー性鼻炎の有無を確認し、必要に応じて耳鼻咽喉科との連携を図りながら治療を進めることも重要となる。 乳歯列期のⅢ級不正咬合における主な検査項目は、第二乳臼歯遠心面で評価するターミナルプレーンのタイプ、前歯部の被蓋の程度、舌癖や睡眠態癖などが挙げられる。これらの検査項目をふまえ、筆者は機能的マウスピース矯正装置「プレオルソ」(フォレスト・ワン社)を積極的に使用している。図 1 は、実際に機能的マウスピース矯正装置を用いて早期治療を行った症例を示す。このように、Ⅲ級不正咬合を早期に改善す
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