JAO[Journal of Aligner Orthodontics]日本版 2025年No.4
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筒井武男 TSUTSUI Takeo, DDS.筒井歯科医院 〒807-0825 福岡県北九州市八幡西区折尾3丁目1-5 連絡先 E-Mail: tutui-dr@22i.jp演者日本版オリジナルページ 論考 筆者は、今回の執筆にあたりこれを再考してみた。一般的に矯正歯科治療の目的は、歯並びと咬み合わせを改善し、機能性と審美性を高める点にあるとされ、具体的には以下の 7 つが考えられる。 ❶審美面の改善による QOL の向上 ❷う蝕や歯周病といった歯科疾患の予防 ❸顎口腔機能発達不全の予防と治療 ❹咀嚼機能や発音の改善と維持 ❺呼吸機能や口唇閉鎖不全の改善 ❻顎口腔機能障害の予防と治療 ❼体のバランスや運動能力の改善 そして歯科矯正学は、元来「不正位にある歯を正しい位置に移動する」という試みから始まった学問である。そこに時代の変遷とともに顎顔面の成長発育、予防、咀嚼構音などの生理的機能の改善などの考え方が「 矯 正 歯 科 治 療 の 目 的 は 何 だ ろ う ? 」筒井武男筒井武男73キーワード アライナー型矯正装置、力の見える化、顎口腔機能障害、下顎位、顎関節Journal of Aligner Orthodontics 日本版 | 2025 vol.5 issue 4加えられた結果、日本では榎が「歯・歯周組織・顎、さらにそれらを包含する顔の正常な成長発育を研究し、それら諸構造の不正な成長発育から引き起こされる不正咬合や、顎の異常な関係を改善して顎口腔系の正しい機能を営ましめ、同時に顔貌の改善を計って社会的・心理的に個人の福祉に寄与し、進んでは不正状態の発生を予防するための研究と技術とを含む歯科の1 分野」(原文ママ)1 と表現し、現在では一般的に「不正咬合の予防および診断を治療に関する問題を研究する歯科医学の専門領域のひとつ」との定義になっている。ただ、筆者も含め現状の矯正歯科治療は歯を並べることに終始し、上記の目的や定義を満たすことが果たしてできているだろうか、との疑念が湧く。 また矯正歯科治療は、他の歯科治療と比較して非常に不確定要素が強い治療といえる。具体的には歯の移動の差異、歯周組織、下顎位、顎関節、性格、生活習慣など患者がもつ個体差の幅が広い中で行う治療であり、術者としてすべてコントロールしていくことは困難である。用いる矯正装置が固定式であろうと可撤式であろうと、予測実現性の高い治療を目指すうえで重要なのは、「個体差」「顎関節・下顎位」を含めた診査診断・治療計画立案を行うことであると考える。予測実現性の高い矯正歯科治療を 考える・実現する「なぜ?」から考える矯正歯科治療

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