JAO[Journal of Aligner Orthodontics]日本版 2025年No.5
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日本版オリジナルページ 論考 本稿前編では、アナログからデジタルへの移行が矯正歯科診断にもたらした変革について述べた。かつてはフィルム現像や石膏模型の整理・保管などの膨大な手作業が歯科医師の日常であり、資料の劣化や紛失のリスクもつねに抱えていた。これに対し現在は、撮影から数分で高精度3D データが得られ、クラウドを介して安全かつ瞬時に共有可能となり、「保存・整理」の負担が大幅に軽減された。これに加えて「可視化」「数値化」「統合化」「シミュレーション」「人工知能(AI)」「3D プリンティング」という計 7 つの技術が、診断精度の向上、治療計画の多角的検証、患者理解の深化を支えている。これらは単なる効率化ではなく、データを新たな診断価値に変換し、治療精度と患者体験を質的に高める臨床革新である。一方で、精度への過信やデジタル特有の落とし穴も存在する。今回の後編では、デジタル矯正診断における代表的な誤差要因を例示しながら、そのリスクと対策について考察する。デ ジ タ ル の 恩 恵 の 一 方 でデ ジ タ ル 矯 正 診 断 の 落 と し 穴移 行入 力間所 睦間所 睦※本記事のイラストはテーマに合わせて AI(OpenAI)を用いて作成しています。現在の汎用性 AI の可能性と限界を確認してみてください。(編集部)キーワード 矯正診断、デジタライゼーション、シミュレーション、可視化、AI、3D プリンティングJournal of Aligner Orthodontics 日本版 | 2025 vol.5 issue 5 デジタルによって描かれる数値や画像は、あくまで「仮想像」であり、臨床の現実をそのまま保証するものではない。入力 ➡ データ処理 ➡ 出力という各段階には、それぞれに固有の誤差が潜んでおり、術者がその特性を理解しないまま運用した場合、最終的な臨床判断に少なからぬ影響を及ぼす可能性がある。75間所 睦 MADOKORO Mutsumi, DDS.白金高輪矯正歯科 〒108-0072 東京都港区白金1丁目29-13 2F 連絡先 E-Mail: info@shirokane-kyousei.jp処 理出 力デジタル矯正診断: 何ができて何を考えるべきか(後編)

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