JAO[Journal of Aligner Orthodontics]日本版 2025年No.5
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は じ め に筆 者 の 歯 列 弓 拡 大 の 考 え 方第 5 回 小児過蓋咬合症例:有田光太郎の考えかた・治しかた [2]考え1 側方拡大は基本的に不要である92なスペースは前方に求めるべきと考えている。その根拠は以下の 3 点である。 ① 混合歯列期におけるリーウェイスペースの存在 犬歯、第一小臼歯、第二小臼歯の萌出に必要なスペースは基本的に備わっていることから、叢生の原因は主に前歯部にあると考える ② 犬歯の萌出方向と誘導可能性 犬歯は頬側から萌出する傾向があり、側切歯と第一乳臼歯(あるいは第一小臼歯)の間にスペースがあれば、自然に歯列内へと誘導することができる(図 1) ③ 第一大臼歯の位置の固定性 筆者は Angle の「第一大臼歯位置不変説」を支持しており(う蝕や近心傾斜などの場合を除く)、大臼歯を固定源とするならば、スペースはおのずと前方に求められる 以上のことから、叢生では「前方拡大」が自然な治療選択となる。しかしここで生じるのが、「前方拡大すると口元が突出するのではないか」との懸念である。日本版オリジナルページ [連載] 有田光太郎 [長崎県・ありた小児歯科・矯正歯科] / 岡野修一郎 [Aligner Studio] / 渡部博之 [愛知県・名駅 MA 矯正歯科] 前回は、混合歯列期におけるアライナー矯正治療の特性を整理しつつ、開咬症例を通じてその可能性を紹介した。その中で筆者は、「叢生を前方に拡大しても口元が突出しない」という臨床観察について言及し、その理由については次回に述べるとして稿を結んだ。 今回はその補足として、「そもそもなぜ前方に拡大するのか」、さらに「前方拡大が顔貌にどのような影響を与えるのか」について、筆者の臨床経験やさまざまな文献から導き出し統合した私見を中心に述べたい。 従来、叢生の治療には「側方への拡大」がスタンダードとされてきた 1 。しかし筆者は側方拡大、特に大臼歯部の拡大を原則として片側 1 mm 以内に抑え、必要WATABE HiroyukiARITA KotaroOKANO Shuichiro有田光太郎 ARITA Kotaro, DDS, Ph.D. 岡野修一郎 OKANO Shuichiro, DDS 渡部博之 WATABE Hiroyuki, DDS, Ph.D. 名駅MA矯正歯科 〒450-0002 愛知県名古屋市中村区名駅3-23-6 第二千福ビル2F E-Mail: info@meieki-kyousei.comJournal of Aligner Orthodontics 日本版 | 2025 vol.5 issue 5ありた小児歯科・矯正歯科 〒852-8016 長崎県長崎市宝栄町14-8 E-Mail: kotarou92@hotmail.co.jpAligner Studio E-Mail: alignerstudio@protonmail.comそれぞれの視点から学ぶ 治る・治すメソッドとストラテジーO P EN B I T E / D E EP B I TE

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