荒谷昌利荒谷昌利 ARAYA Masatoshi, DDS.荒谷デンタルクリニック 〒344-0061 埼玉県春日部市粕壁1-9-46 連絡先 E-Mail: masaobi@jcom.home.ne.jp57キーワード アンテリアガイダンス、EPO(Esthetic Plane of Occlusion)、インダイレクトボンディング法、オーバーコレクション、中心位記録(CR record)、最終閉口相Journal of Aligner Orthodontics 日本版日本版 | 2025 vol.5 issue 6 さて前編では、アライナー矯正治療において術者を悩ませる可能性がある以下の 3 つの課題を挙げた。❶ 歯体移動(特にスペース閉鎖)をどうスムーズに行うかという課題❷ 歯軸を近遠心方向へ傾斜する際の課題❸ 前歯部の頬舌的角度を厳密に設定したい場合の、アライナー単独での挺出にともなう課題 前編では症例を通し、上記の項目❸に関してマルチブラケット法を用いる利点について述べた。筆者は誌上において、前歯部の適切な被蓋量を考慮しながらブラケットポジションを決定し、それぞれの歯を適切な三次元的位置へ導くためのプログラムがスロット内部にあらかじめ付与されたブラケットを口腔内に正確に装着したうえで、適切なレクタンギュラーワイヤーとのコンビネーションで行うマルチブラケット法が、現時点ではアライナー単独で行う治療よりも分があるであろうと結論づけた。 今回は、❶、❷の課題をクリアするための筆者の考えに焦点を当てる。なお、患者の顔貌写真および動画資料については、すべて患者本人の許可を得て目隠しなしで供覧する。日本版オリジナルページ 論考 & 症例報告 前編では、矯正歯科治療における診断を行ううえで、CR-ICP 間におけるディスクレパンシーの状態を咬合器上で確認する作業の重要性について解説し、ディスクレパンシーが治療開始前にほぼ存在しない症例と、量の大きなディスクレパンシーが存在する症例を対比し、どちらの症例についても CR を出発点とした治療法を提示した。 後編では、この治療原則に基づいて治療を行った個々の歯のフォースコントロールがより困難な症例を提示し、筆者が考える診断、正確なブラケットポジショニング法やアライナーの利点を効果的に活かす方法、そして最終的には患者にとってできるだけ少ない負担で、できるだけ大きな利益が得られるような治療がいかに実現できるかについて述べる。また、現在も議論が絶えない、前歯部および犬歯部における被蓋に関する問題、つまりアンテリアガイダンスの概念に関する筆者の考えについても説明していきたい。は じ め に荒谷昌利矯正歯科治療における 顎位および咬合診査の重要性(後編)なぜアライナー矯正治療にも不可欠なのか
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