JAO[Journal of Aligner Orthodontics]日本版 2025年No.6
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日本版オリジナルページ図15 アライナー矯正治療開始前に行うべき重要なステップであるフェイスボウ(a、イヤーピースは外耳道開口部付近の、水準器の泡が中央にくる位置で保持する。こうすることで完全な水平面に対する前歯部の近遠心的傾斜の評価が可能になる。この基準平面をEPO(Esthetic Plane of Occlusion)と呼ぶ。中心位記録は CAD 用ソフトウェアに反映させる。また EPO のダブルチェックとして別の機器でもフェイスボウトランスファーを行う(EZ Bow System、Advanced Dental Designs 社)。図16 アライナー作製のため中心位記録としての口腔内スキャンデータを矯正歯科用 CAD ソフトウェア(M OrthoMove)に転送して立案した治療計画のうち、アライナー矯正治療開始時の状況(治療経過は二次元コードを参照)。アンテリアガイダンスの確立と同時に、上下顎両側第一大臼歯の頬舌的関係の改善も図る。64abJournal of Aligner Orthodontics 日本版日本版 | 2025 vol.5 issue 6合する際、いわゆる中心咬合位に近い位置で咬もうとすることが多いためだと考える。この咬合のずれをうまく利用することによって、第二大臼歯に対して緩徐ではあるが積極的な圧下を図ることができるため、ドリコフェイシャルパターンを有する患者の下顎を時計回りに回転させたい場合、CR を基準として行うアライナー矯正治療は大きな戦力を発揮するだろうと考えて選択した。 アライナー矯正治療を開始するにあたり、まず患者の顎関節を含めた顔面頭蓋における上下顎歯列の立体的位置関係を記録するため、 フェイスボウトランスファーおよび中心位記録を行った(図15)。Primescan(デンツプライシロナ社)にて口腔内をスキャン後、矯正歯科用 CAD ソフトウェアの M OrthoMove(デンケン・ハイデンタル社)で、引き続き CR = ICP の確立および適切なアンテリアガイダンスの付与を目的とした治療計画の立案を行った。なお筆者は現時点において、デジタルシミュレーションにおける仮想のヒンジアキシスの正確性に疑問を抱いているため、咬合高径の決定は咬合器上で行っている。アンテリアガイダンスの確立と同時に上下顎第一大臼歯の頬舌的関係の改善を図るため、上下顎同時にアライナーの装着を開始し、14日ごとの交換とした(図16)。アライナー矯正治療開始の際も、前段階の治療を踏襲し 3 つの原則(68ページ参照)に則り設計を行う。この時点で第 1 原則の「安定した顎関節」は確立されているため、第 2 原則の「適切なアンテリアガイダンスの確立」を考慮する。特に本症例は上顎右側側切歯が口蓋側に転位していた

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