第 6 回 第 6 回 成人開咬症例:岡野修一郎の考えかた・治しかた [1]OKANO ShuichiroWATABE Hiroyuki岡野修一郎 OKANO Shuichiro, DDS Aligner Studio 〒151-0063 東京都渋谷区富ヶ谷1-32-22 E-Mail: alignerstudio@protonmail.com渡部博之 WATABE Hiroyuki, DDS, Ph.D. 有田光太郎 ARITA Kotaro, DDS, Ph.D. ありた小児歯科・矯正歯科 〒852-8016 長崎県長崎市宝栄町14-8 E-Mail: kotarou92@hotmail.co.jpARITA KotaroJournal of Aligner Orthodontics 日本版日本版 | 2025 vol.5 issue 696 患者は27歳女性で、「歯並びがガタガタしている」を主訴として来院した(図 1 ~ 3 )。 顔貌所見 正貌から上顎は左右対称、下顎は軽度の左方偏位が見られた。また、スマイル時の顔貌より上顎の歯肉露出量がやや多いことを認める。側貌はストレートタイプ、上唇位にやや前突傾向が見られるが、上下口唇位はほぼ標準と評価した。 口腔内所見 両側ともに犬歯・ 臼歯関係はⅡ級であった。オーバージェット +2.8mm、オーバーバイト+9.6mm、上下顎ともに中等度の叢生を認めた。上顎小臼歯歯冠はやや口蓋側に傾斜しており、歯列弓が狭窄していた。上顎歯列正中線は顔面正中線と一致、下顎歯列正中線は0.5mm 左方偏位であった。 パノラマエックス線写真所見 第二大臼歯までの永久歯数は過不足なく、上下顎両側第三大臼歯を認めた。 セファログラム・セファロ分析 前後方向について標準値と比較すると、骨格系は SNA 角77.6°、SNB 角71.8°、ANB 角 +5.8°、Wits 分析 +6.1mm と 1 SD を超えて大きい値を示し、骨格性Ⅱ級と判断した。歯系は名駅MA矯正歯科 〒450-0002 愛知県名古屋市中村区名駅3-23-6 第二千福ビル2F E-Mail: info@meieki-kyousei.comは じ め に初 診 時 の 状 況日本版オリジナルページ [連載] 岡野修一郎 [Aligner Studio] / 渡部博之 [愛知県・名駅 MA 矯正歯科] / 有田光太郎 [長崎県・ありた小児歯科・矯正歯科] 連載第 1 回でも述べたように、筆者のアライナーによる過蓋咬合治療では、可能な限り相対的圧下を取り入れることを重視している。これは難度の高い絶対的圧下を、より難度の低い移動に置き換えながら、最終的に理想的な咬合を成立させることを目的としている。 アライナー矯正治療の中でも、リカバリーがもっとも深刻な状況に陥るリスクを抱えるのが過蓋咬合であり、TAD などの強固な固定源が必要となる場合がある。 アライナー単独での過蓋咬合治療では、治療計画に可能な限り相対的圧下の要素を含め、現実的に達成可能な最終位置と学術的に理想とされる最終位置、つまり「real」と「ideal」のバランスを慎重に取る必要がある。それぞれの視点から学ぶ 治る・治すメソッドとストラテジーO P E N B I T E / D E E P B I T E
元のページ ../index.html#5