完全解説 根管治療トラブル攻略本
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A 乳歯の根管治療では作業長の把握が難しい。理由としては、大きく湾曲し、圧平した根管形態(乳臼歯)、後3.Silva LLCE, Cosme-Silva L, Sakai VT, Lopes CS, Silveira APPD,Moretti Neto RT, Gomes-Filho JE, Oliveira TM, Moretti ABDS.Comparisonbetweencalciumhydroxidemixturesandmineraltri-oxideaggregateinprimaryteethpulpotomy:arandomizedcon-trolledtrial.JApplOralSci.2019May20;27:e20180030.1.VitaliFC,SantosPS,CardosoM,MassignanC,GarciaLDFR,Bor-toluzziEA,TeixeiraCDS.Areelectronicapexlocatorsaccurateindeterminingworkinglengthinprimaryteethpulpectomies?Asys-tematic review and meta-analysis of clinical studies. Int Endod J.2022Oct;55(10):989‐1009.2.Mekkriangkrai D, Nakornchai S, Jirarattanasopha V. Success Rateand Related Factors of Vitapex Pulpectomy in Primary Teeth: ARetrospectiveStudy.EurJDent.2023Oct;17(4):1163‐9.で高位断髄し、水酸化カルシウム製剤やMTAで根管充填を行うと、根管内の感染歯髄を残すこととなり、後のアブセス(膿瘍)形成や病的な歯根吸収へとつながるため注意が必要である 2 ,3 。→ 症例 2 う蝕処置中に偶発的に露髄してしまう症例では高位断髄、う蝕が歯髄までおよび、炎症と出血の強い歯髄がみられる場合は低位断髄(歯根の中央程度)、腐敗臭を感じるような感染根管では根尖まで拡大し、水酸化カルシウム製剤(ビタペックス®)で根管充填を行うなど、症例に応じて作業長を変化させる必要がある。→ 症例 3 また、根管治療を行った乳歯の歯根吸収は早く、早期に脱落してしまうことがあり、その場合は後続永久歯の萌出まで保隙をする必要がある。→ 症例 4継永久歯の萌出にともなう生理的吸収、または感染による病的吸収により歯根や髄室床に吸収がみられることが挙げられる 1 。 もし#10手用 Kファイルで作業長測定が安定しない場合、ラバーダム防湿下で#25などの少し太めの手用ファイルで作業長を測定すると、安定しやすい。根管内に次亜塩素酸ナトリウム水溶液などの水分が多い場合も作業長が不安定になりやすいため、ある程度乾燥をさせてから測定する。もし根管口に入れた瞬間に測定が不可能となる場合は、歯根吸収が進行している場合が多い。→症例 1 乳歯の歯髄の生活力は旺盛で、失活部分と生活部分が混在していることも多く、複根歯ではそれぞれの歯根によって感染の進行度も異なる。筆者の経験上、根管治療中のファイルに腐敗臭を感じるような感染根管になっていない限り、根尖まで完全に失活している症例は少ない。 また髄室床に存在する太い副根管による分岐部の病変が存在し、根管には感染があまり及んでいない場合もある。これらからも推察できるように乳歯の根管治療においてどこまで歯髄を除去すべきかは曖昧であり、明確な基準がない。 そのため、乳歯すべての根管治療において根尖まで拡大する必要はないが、逆に誤った診断により根管口付近参考文献乳歯の既根管治療歯にアブセス(膿瘍)ができてしまったら症例によって作業長を変えるPART 1  根管治療時のトラブル23▶ 乳歯の根管治療で作業長がわからない場合Q 4 乳歯の根管治療で作業長がわからない

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