ADVANCED_ ZYGOMATIC IMPLANTS_日本語版
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21ZAGAコンセプトの起源結果図1-1 本臨床写真は、オリジナルの術式における重要な特徴を示している。具体的には、インプラントが口蓋側から埋入されている様子や、埋入経路を確認するために上顎前壁に作られたウィンドウが確認できる。30年前、ザイゴマインプラントは大多数の臨床医にとって未知の領域であった。しかし現在、ザイゴマインプラント治療は口腔インプラント学の進化における重要なマイルストーンとして位置づけられている。普及が進むにつれて、多くのエビデンスが蓄積され、治療の有効性が裏付けられるようになった。この術式は長期にわたって良好に記録されており、従来のインプラントと骨移植を併用した治療と比較しても遜色ない成功率を示している。この20年間で、ザイゴマインプラントのデザインは改良され続け、それにともなって手術プロトコルも進化してきた。本章では、ザイゴマインプラント支持型補綴装置による口腔修復の進化を、その起源から現在まで概観していく。1990年代初頭、頬骨にインプラントを固定する可能性について、鼻顔面補綴および歯科補綴に関する複数の報告が発表された1、2。そして2004年、Brånemark らは、 オンレー骨移植とザイゴマインプラントの同時埋入に関する長期経過観察研究を発表し、ザイゴマインプラントは科学的なインプラント学コミュニティに正式に受け入れられるようになった3。この研究では、28名の患者に対して52本のザイゴマインプラントと106本の従来型インプラントが埋入された。そのうち17名の患者には骨移植も行われ、全員が5~10年間の経過観察を受けた。ザイゴマインプラント埋入の手技は、上顎前壁の上方外側4分の1にウィンドウ法による上顎洞開窓術を施行し、その後、上顎洞粘膜を剥離するというものだったが、「粘膜を損傷しないよう特別な注意は払わなかった」と報告されている3。Brånemark に よ れ ば、「ザ イ ゴ マ フ ィ ク スチャーの方向は、補綴的要求に対して最適な安定性を得るために選択された」と述べられており、上顎前壁の弯曲に応じて、インプラントの挿入経路はおおむね口蓋側からのアプローチが取られていた3。この経路は上顎洞内を通過する軌道とされ(図1-1)、インプラントヘッドが口蓋側に位置するため、最終アバットメント周囲の軟組織の炎症を防ぐために口蓋弁を薄くし、脂肪組織を除去する必要があった。それにもかかわらず、初期の研究では口蓋側に位置するインプラントヘッドによる不快感や発音障害は報告されなかった。長期的な経過観察において、ザイゴマインプラン ト の 失 敗 は 3 例 報 告 さ れ て お り、 残 存 率 は94.2% であった。全体として、5年後の補綴装置の成功率は96% とされている。さらに、長さ10~20mm の従来型インプラントが少なくとも96本埋入されたが、これら従来型インプラントの成功率は約71% であった。28名の患者のうち2名は、ザイゴマインプラント2本のうち1本が、口蓋側の埋入口での排膿と副鼻腔感染症により、補綴装置から切り離される結果となった。経過観察期間中、4名の患者が再発性副鼻腔炎を発症している(図1-2)。 これら4例についてはすべて、 下鼻道に対する上顎洞開窓術が施行され、良好な治療結果が得られた。さらに、X 線画像診断上で副鼻腔炎が確認されるも、臨床的には症状が現れなかった患者が4名いた。これらのケースでは、特別 な 治 療 は 必 要 な い と 判 断 さ れ た。Lanza とKennedy の定義4によると、臨床的な副鼻腔炎を発症した症例の割合は21% とされている。また、技術の進化Brånemarkのオリジナル術式:ZAGAストーリーの始まり

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