ADVANCED_ ZYGOMATIC IMPLANTS_日本語版
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41ZAGAコンセプトの起源図1-3 オリジナルの術式に基づき、後方部に口蓋側配置で埋入された2本のザイゴマインプラントと、前方部に4本の標準的なインプラントを用いた固定式補綴装置の咬合面写真である。補綴スクリューの方向を補正するための角度付きアバットメントは、この術式が開発された当時は存在していなかったことがわかる。PER-INGVARBRÅNEMARK への賛辞オリジナルの術式における課題は、師を謙虚に受け入れて学び、そしてその知識をさらに進化させて結果を高めようとする弟子の健全な誇りをの説明として示唆されているのは、①ザイゴマインプラントヘッド内のアバットメントスクリューのネジ穴が、口腔‐上顎洞交通を生じさせ、副鼻腔炎を引き起こした可能性、2つ目は②口蓋側のインプラント頚部でのオッセオインテグレーションが不十分で、インプラントが横方向に動揺し、機能時に“ポンプ効果”が生じた可能性である。Brånemark の研究ほど、 詳細に患者の経過、特に副鼻腔の状態を追跡した研究はほとんどないことは注目に値する。さらに、オリジナルの術式が最初に行われた当時、歯科領域の文献では副鼻腔炎の診断報告方法に関する統一見解がなかったため、副鼻腔感染症の発症率に関する情報は慎重に解釈する必要がある。ザイゴマインプラントに焦点を当てた多くの研究では、副鼻腔の病変を「副鼻腔炎」とだけ表記しており、その種類やともなう徴候・症状、CT や内視鏡で診断が確認されたかどうかについては明確にされていない。また、副鼻腔炎はザイゴマインプラント埋入後、数年経過してから診断されることもある。まとめると、口腔‐上顎洞瘻孔およびその後の副鼻腔炎は、ザイゴマインプラントに関連する典型的な晩期併発症であり13、その原因についてはさまざまな仮説がある。1つは、インプラントが口蓋を横断する際に、その頚部を取り囲む薄い骨が長期間にわたって吸収されることである。また、埋入時の過度な骨形成、薄い歯槽頂の骨折、歯周病の既往、口腔衛生状態など、骨吸収過程に影響を与える他の要因も考えられる。2016年には、Nobel Biocare 社が、TiUnite 表面を持つ「Nobel Zygoma」インプラントを、従来の「BrånemarkSystemZygomaTiUnite インプラント」に代えて発売した。この新しいインプラントは、非貫通型のインプラントヘッドを備え、全面が粗面処理されており、専用のザイゴマインプラント用アバットメントが必要となった。しかし、2020年の Felice らによる最新の多施設共同研究でも、副鼻腔炎がもっとも頻繁な併発症として挙げられている14。このことからも、軟組織のトラブルや副鼻腔炎のリスクは過小評価すべきでないことがわかる。また、オリジナルの術式は2回法プロトコルであるため、上顎洞への懸念が生じるだけでなく、総治療期間や手術回数が増えるという欠点がある。このプロセスでは、治癒期間中の補綴的管理も最適とはいえない。そのため、一部の著者は即時荷重プロトコルを採用し、最初から最終アバットメントを装着して、アバットメント交換を避ける単回法を提案している15、16。これらの要素は、より良い軟組織バリアを形成することで、口腔‐上顎洞交通のリスクを低減できると考えられている。さらに、オリジナルの術式におけるもう1つの欠点は、インプラント体を上顎洞内に保持することで、インプラントヘッドが口蓋側に出現することが多かった点である。この結果、補綴装置の口蓋側がかさばり、舌の不快感や発音障害、口腔清掃の困難を引き起こすことがあった(図1-3)。さらに、上顎洞外側壁に強い陥凹がある患者では、インプラントが中口蓋付近に出現してしまうため、上顎洞内経路でのザイゴマインプラント埋入が不可能な場合もある。

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