ADVANCED_ ZYGOMATIC IMPLANTS_日本語版
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技術の進化図1-4 この X 線画像は、Brånemark らによる2004年の研究から引用されたものであり、上顎洞と鼻腔を隔てる中隔にインプラントが埋入されている様子(白丸)が示されている(Brånemark らによる文献3より転載)。図1-5 スロット法を示す術中写真。インプラントを埋入する前に溝が作られるため、インプラント本体との適合が最適ではないことに注目されたい。(Dr.M.Peñarrocha 提供)の下縁まで、そして上顎骨の頬骨突起の中下部まで剥離することを提案した。オリジナルの術式とは異なり、頬骨の前頭突起と側頭突起が形成する角部は露出させなかった。なぜなら、この溝がインプラントの方向決定のガイドになると理論づけたからである。賢明にも、著者らは重度の上顎萎縮に対して、オリジナル術式で指示されていた広範囲な上顎洞前壁の開窓部が本当に必要なのかもまた疑問視した。その代わりに、事前に画像診断で確認したインプラントの方向に沿って狭い「スロット」を作成し、インプラントの角度を可視化できるように提案した。しかし、この新しい方法でもっとも重要な貢献は、口蓋側からのインプラント埋入の必要性そのものに疑問を投げかけた点である。口蓋側からの埋入は、かさばった補綴装置を生じさせる原因であった。Stella と Warnerは、これに代わり、解剖学的にすぐれた補綴装置を実現するために歯槽頂からの埋入を提案した。また、局所麻酔および静脈内鎮静法が導入され、縮小した上顎洞前壁の開窓部と慎重なインプラント経路による、 より制御された「スロット」アプローチが治癒の促進とインプラントヘッドの適切な補綴装置の位置決めに有用であると示唆された。もって語られてきた。Brånemark の弟子たちは、オリジナルの術式に対して1つひとつの改良がどのような影響を及ぼすかを慎重に検証しながら、師が蒔いた種を着実に育ててきた。これこそが、師にとってもっともすばらしい賛辞であり、最大の報酬だと思う。そもそも、私たちが部分的な無歯顎に対して複数のインプラントを用いた修復を考え始めた頃、Brånemark は す で に 歯 槽 骨 か ら 離 れ た 場 所 に「フィクスチャー」(彼は「インプラント」とよぶことを好まなかった)を固定して補綴装置を支持することを模索していた。彼はザイゴマインプラント埋入の開拓者であるだけでなく、上顎洞と鼻腔を隔てる中隔にインプラントを埋入するという、まさに先駆的な試みも行っていた(図1-4)。鼻骨を活用したインプラント埋入は、一部の先見の明をもつ専門家を除いて、私たちがごく最近ようやく注目し始めた分野のようである(第11章を参照)。オリジナルの Brånemark 術式は成功例が報告されていたものの、克服すべき課題が存在していることは明らかであった。口蓋側へのインプラントヘッドの過剰な突出を解消し、術後の不快感を軽減するために、Stella と Warner は2000年にテクニカルノートで「スロット法」を初めて報告した17。まず、オリジナルの術式で推奨されていた前庭側の Le Fort 切開に代わり、歯槽頂切開が選択された。前庭側の切開は、弁の閉鎖が上顎洞前壁の開窓部の上にくるため、管理が困難になることがあるからである。著者らは、弁を眼窩下神経5スロット法

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