矯正治療の長期経過と保定管理
3/7

4-138図1  過去に118症例のAngle classⅡ症例について,nasion 垂 線(McNamara line)に対し,上顎のA点および下顎のpogonionの前後的位置関係を調べたもの.上顎のA点(緑の中央値)がnasion垂線より前方に位置していれば前方位グループ,nasion 垂線上であれば中間位グループ,nasion 垂線より後方であれば後方位グループとし,下顎のpogonionはnasion 垂線に対してやや後退位に位置している中間位グループ(紫の中央値)と, 非常に後退した(桃色の中央値)後方位グループに分けられ,上下顎の関係が示されている.* KPSセミナーの資料をもとに作成Angle class Ⅱ症例の治療検討に 際して――本当に“上顎前突”か? 不正咬合のなかでも,Angle class Ⅱ症例は上顎前突と同義に扱われていることが多いように思われる.しかし,日本人のclass Ⅱ症例において,上顎が実際に前突しているケースはどれほどあるのだろうか.筆者はこの点に長らく疑問を抱いてきた. 図 1 は,過去に実施した118症例のclassⅡ症例に対して,nasion 垂線(McNamara Line)に対する上顎のA 点および下顎のpogonionの前後的な位置関係を調べた結果である.ここでは,以降提示する 3 症例についても,この観点かnasion 垂線(to FH)ー上顎 A 点 と pogonion上顎3.3%前方位下顎中間位前方位3.4%下顎後方位表1  Nasion 垂線(to FH)によるAngle class Ⅱの傾向.* KPSセミナーの資料をもとに作成.上顎前方位  3.3%上顎中間位16.9%上顎後方位  1.7%全体21.9%ら検討を加えていきたい. 上顎のA 点がnasion 垂線より前方に位置する場合は前方位グループ,垂線上であれば中間位,後方であれば後方位グループとし,下顎のpogonionはnasion 垂線に対してやや後退した位置にある中間位グループ(紫の中央値)と,著しく後退した後方位グループ(桃色の中央値)に分けられることで,上下顎の位置関係を分類している. 表 1は,上顎の 3 つのグループに対する下顎の位置の組み合わせを示しており,それぞれの組み合わせにおける総数の割合が記載されている.これらの数値からはやや極端な傾向が示されているが,真の上顎前突の割合が少ないことがうかがえる.ちなみに,当院において側貌が良好な女性20名を対象に同様の評価を行った結果,Class Ⅱ 118 症例後方位1.7%中間位後方位40.8%後方位全体  6.7%50.8%42.5%上顎のA 点および下顎のpogonionの前後的位置関係NNN矯正治療の長期経過と保定管理 中間位16.9%中間位中間位33.9%後方位nasion 垂線下顎中間位下顎後方位  3.4%33.9%40.8%78%

元のページ  ../index.html#3

このブックを見る