父母ヶ浜 2000日
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3はじめにはじめに父母ヶ浜 2000日花と自然を愛する歯科医師の足跡浜の上を引きずるほどになるゴミ袋の重さ、ゴミの中にスナメリの死骸を見つけた日には、「2050年の海は魚の量よりゴミの量が多くなる」という言葉が、長い時間頭の中を占拠していた。本書は「デンタルライフデザイン」(株式会社モリタ)に連載中(2019年~)のコラムから選んだ36編、過去に書いたエッセイ7編と書き下ろし8編に、目に留まった風景写真を重ね合わせている。特にスポットライトを浴びている父母ヶ浜の絶景と、その足元にある大量の漂着ゴミの帯という現実から皆様が何を感じとるかは、私の最大の関心事の1つである。今地球は、汚染、気候変動、生物多様性の喪失という3つの危機に晒されている。この地球で生きていく次の世代のことが心配にはならないか。その言葉を口にすると、「私たちに何ができるのか」と問われることも多い。しかし実はどんなに難しい課題でも、解決への糸口はそれを認識できた瞬間にあるのだ。あけぼのの浜、ゴミを拾い上げる私を先導するように、シロチドリが3羽、小さな足跡を砂の上に残していく――そして今日も、何かを訴えるように鳴き続ける。2025年7月

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