第7回下顎臼歯部遊離端欠損におけるインプラント治療の基本 軟組織編Quintessence DENTAL Implantology─ 0112112白鳥清人 Kiyoto Shiratori静岡県開業:医療法人社団 白鳥歯科 下顎遊離端欠損のインプラント治療の結果を安定させるためには、周囲に十分な硬・軟組織を獲得し長期に維持させることが必要である。抜歯された歯槽骨はさまざまな欠損形態をしているが、できれば最小限の外科介入と侵襲でその目的を達成したい。 前回は、抜歯後の時間経過が長い骨頂部が狭窄した症例と、抜歯窩が残存し内側性の骨欠損を有する症例に対するアプローチ法について報告した。今回はその続編として、下顎遊離端欠損におけるインプラント手術の粘膜の取り扱いの基本として、粘膜の切開縫合にフォーカスを当てて、インプラント埋入手術の臨床写真と動画にて解説する。 軟組織の検査では、角化粘膜の量と質を見ること、特に最終インプラント補綴の頬側マージン部にどれだけの角化粘膜を確保できるかが重要である。インプラント周囲の角化粘膜の必要性については多くの議論がなされてきたが、近年では「インプラント周囲の角化粘膜はあったほうがよい」とする見解が多く1、筆者自身の多くの臨床経験からも同意見である。 研究データでは角化粘膜の幅と厚みについて2〜3mmを動画で学ぶ インプラント外科 基本の「き」はじめに軟組織の、特に角化粘膜が不足した症例への対応Basic境界として、その有意差が報告されていることが多い2。これによると幅径φ4〜5mmのインプラントを選択した場合、その周囲に最低2mmの角化粘膜を確保するとなると最低でも8mmの角化粘膜が必要になる。しかし、臨床例でそれだけの量が残存していることは少なく、その際は遊離歯肉移植(free gingival graft:FGG)が有効であるという報告も多い3。 そこでほとんどのケースで FGGを行うことになるが、筆者は実際の臨床では、残存している角化粘膜内で歯槽頂切開を加え、フラップをインプラントの頬側に固定して設置することで角化粘膜幅を増大させている(図1)。術前の角化粘膜幅が2mm程度であっても丁寧な角化粘膜内切開を加え、頬側弁を根尖側に移動して固定縫合することで、角化粘膜の増大を行っている(図2)。Basic 角化粘膜が少ないケースへのFGGは、確かに長期的に良好な状態が維持されるという期待値をあげるだろうが、患者への外科侵襲や経済的な負担を考慮すると、できるだけ行いたくない。そして、自分が患者であったら間違いなくFGGは拒否している。 そのために前述したような粘膜マネジメントをインプラント埋入時に行い、それでも角化粘膜の増大が必要と判断された場合のみFGGを行うべきであると筆者は考えており、実際の臨床では、ほとんどFGGは行っていない。
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