第6回非審美領域の軟組織マネジメントにおける各種合併症Soft Tissue ManagementQuintessence DENTAL Implantology─ 0118図1 Barootchiらがまとめたリッジプリザベーションの合併症と発生率(これまで報告された文献から抜粋)。なお発生率が報告されているもののみ割合を記載している。118 前回までで非審美領域におけるさまざまな軟組織マネジメントを解説してきた。このような誌面上では基本的には予想どおり/予想以上の結果が得られたものが紹介されるが、臨床においては予想外のことも起こりうる。治療の選択肢の間違い、術者の技術的な問題、患者のコンプライアンス不足なども含め、予想外の結果をまねいてしまった時に患者への説明やその後の対応に苦慮した経験はないだろうか。 本連載では恥ずかしながらそのような失敗、合併症などについてもありのままを提示し、文献的な裏付けもふまえて解早期合併症・感染:2.8〜9.1%・治癒不全 ・骨補填材の早期喪失:2.9〜14.3%・持続的な出血:13.3%・粘膜治癒不全 3.3〜7.1%・角化粘膜幅の喪失・隣在歯の歯肉退縮晩期合併症・追加硬組織増生の必要性:2.7〜57%・インプラントの一次安定性不良:4〜56%・オッセオインテグレーション不良:3.3〜20%説することで同様の経験を未然に防ぐ一助としていただければと考えている。なお、今回は筆者が行った治療以外も内容に含まれる。 リッジプリザベーションは抜歯にともなう硬組織のボリューム減少を抑えるために効果的な治療法であり、軟組織にも配慮することで角化粘膜幅の減少を抑え、軟組織の厚みも確保できるということを連載第2回で解説した。 手技としてはインプラント関連外科処置の中では比較的簡単であり、術後の腫れや痛みも軽微な低侵襲な手法である。治療期間が長くなってしまうというデメリットはあるものの、硬組織増生を回避もしくは簡便なものにできるという点で大きなメリットのある治療法である。しかし、リッジプリザベーションにも合併症がある。治癒過程のさまざまな段階で多様な合併症があるが、Barootchiらがまとめた報告から抜粋したい(図1)1。文献によって合併症発生率には大きな差があるが、さまざまな合併症が、ある程度の確率で発生することには留意すべきである。 筆者もリッジプリザベーションにともなう合併症を経験している。その中で、まず角化粘膜幅を失ってしまった症例を提示する(症例1)。本症例は、角化粘膜を保存するためにフラップの一次閉鎖を行わず、オープンバリアメンブレンテクニックを用いたにもかかわらず角化粘膜を喪失しFGG(遊離令和版 軟組織のトリセツリッジプリザベーションの合併症はじめにAdvanceAdvance増田英人 Hideto Masuda大阪府開業:ますだ歯科医院
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