大特集参考症例1:連結せずに経過観察している重度歯周炎15年経過症例1 抜歯基準臨床論文はじめに斎田寛之Hiroyuki Saida埼玉県開業:斉田歯科医院2006年1月図1-b ₁₁ともに失活していたため根管治療を行った。2006年5月図1-c ₁の根尖病変は縮小せず、歯根端切除を行った。2008年9月図1-d ₁の病変は縮小傾向。₁も骨植は悪いが動揺度は1度以下であり、連結せず経過観察。Quintessence DENTAL Implantology─ 02082020年8月図1-e 初診から15年経過時。₁₁は安定し良好に経過している。骨欠損の大きさや骨植だけで抜歯の判断はできない。2005年10月図1-a 45歳女性。全顎的に重度歯周炎。₁に大きな根尖病変がある。₁遠心の骨欠損も根尖を越えている。28 インプラントが欠損補綴における重要な選択肢であることは、もはやいうまでもない。ただし、歯の欠損の原因の1位が歯周病であることを考えると、歯周病患者におけるインプラント治療というのは、避けては通れない治療オプションである。同時に急増するインプラント周囲炎の原因を考慮するに、歯周病患者におけるインプラント治療においては、何においてもまずは歯周病のコントロールが先という原則を忘れてはならない。 しかし実際の臨床においては、咬合支持の確保のために歯周病の全顎的なコントロールを待たずにインプラント治療を行わなくてはならない場面にも遭遇する。本稿では、歯周病患者に対するインプラント治療において筆者が考えていること、大切にしていることについて症例を通じてお伝えしたい。 歯周病患者の歯周病罹患歯に対してインプラントを適応する前に、その歯が抜歯適応なのかどうか、保存の可能性がないのかを考える必要がある。「抜歯はできるだけ遅いほうがよい」という論文1が有名だが、その考えには筆者も同意する。歯は意外と保存できるものである。抜歯を決定づける要素は非常に複雑で、明確な基準は存在しない。そのため、抜歯と決断する前に、保存の選択肢はないのか、どうすれば保存できるのかを考える必要がある。 抜歯/非抜歯を決定するうえでは、いくつか考慮すべき点がある。まず、骨欠損の大きさだけで抜歯/非抜歯は決まらないということである。患者要素(社会的背景、性格、経済的条件、モチベーションなど)、口腔の要素(年齢、喫煙、咬合力、歯肉のタイプなど)、歯の要素(骨欠損の大きさ、歯根長、動揺度、根分岐部病変の有無ほか)を考慮しながら総合歯周病患者へのインプラント治療と天然歯との共存
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