価5と、近年注目されている患者報告アウトカム評価(Pa-症例1:長期経過中にインプラントには問題が出ず、対合歯にトラブルが生じたが高齢のため治療介入が困難になった症例はじめに症例の概要 インプラントの合併症には機械的および生物学的合併症があり1、多くの症例において力の問題と細菌感染が複雑に絡み合っている。特に深刻なのは、インプラント周囲炎による骨吸収にブラキシズムなどの咬合因子が加わった場合で2、多数本による固定性補綴装置支台インプラントが一度に失われると、その後のリカバリーは困難を極め患者・術者の失望も大きい。また、インプラントが健全であってもその対合歯が失われていくことも経験する。なかでもインプラントに対合する失活歯の歯根破折は予防の困難な合併症である3。患者の口腔内は長期的には必ず変化していき、その度に治療介入の判断を迫られる。 全顎にわたるインプラント治療では、将来を見通した補綴装置の選択が重要である。筆者の開業地は札幌市内でももっとも高齢化が進んでおり、インプラント治療を希望する患者は減少傾向にあるが、50代、60代では依然として希望者は多い。現在、当院ではインプラント治療の相談に来た患者に対して将来の全身的な変化を見据えた診断とコンサルティングを行っている。そのなかで、可撤性補綴装置を選択することによって、力とプラークコントロールの2つを解決できるケースが増えている4。診断に際しては、口腔機能検査やブラキシズム検査をはじめとした補綴関連検査などの客観的評tient Reported Outcome Measures:PROM)などの主観的評価6を積極的に行い、長期に安定した結果と臨機応変なリカバリーに対応できるようにしている。 本稿では、可撤性の補綴装置を選択すべきだったと考えられる長期症例を振り返り、問題点を整理し、現在ならどのようにインプラント治療を行っていくかを検討する。 患者は67歳の女性(図1-a、b)。来院された2001年11月は、当院でインプラント患者が増え始め、全顎症例も手掛け[キーワード]#治療に対する評価#可撤性補綴装置#IOD #IARPDQuintessence DENTAL Implantology─ 0278981991年北海道大学歯学部卒業後、歯学博士取得。1997年開業。日本口腔インプラント学会専門医・指導医、北海道大学歯学部臨床教授。長期インプラント症例を再評価する─全顎インプラント治療を長期に安定させるための可撤性補綴装置の選択─和田義行 Yoshiyuki Wada北海道開業:和田歯科クリニック客観的評価と主観的評価から考える多数歯欠損インプラント治療の長期予後
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