第9回上顎臼歯部複数歯欠損におけるインプラント治療の基本Quintessence DENTAL Implantology─ 045494白鳥清人 Kiyoto Shiratori静岡県開業:医療法人社団 白鳥歯科動画で学ぶ インプラント外科 基本の「き」 連載第9回となる今回は、上顎臼歯部複数歯欠損について、そのさまざまな骨欠損形態に対する検査・診断と治療法を、図と動画で解説する。 インプラント治療ではどの部位においても、まず補綴の設計を行い、その補綴に対する骨の状態を検査していく。上顎臼歯部では、上顎洞の存在により骨量が垂直的に不足していることが多い一方、骨量が十分にある部位では骨梁が少なく、骨質が悪化していることも多い。そのため、上顎臼歯部複数歯欠損におけるインプラント治療計画では、それぞれの患者の骨量と骨質、そして咬合力などを把握して、歯槽頂側への骨増生を行うのか、また上顎洞への骨増生の有無を判断していく。そのうえでインプラントのサイズ(長径と幅径)、使用本数とその配置を決定する(図1)。 治療計画を決定したら、そのポジションに正確に埋入するためにどのようなガイドシステムを使うのかを決定する。インプラント埋入手術のガイドには種々の方法があるが(連載第4回参照)、筆者は骨の状態を確認しながらドリリングを行いたいので、歯科技工室で作製したガイド、あるいは動的ナビゲーションシステムで手術を行っている。上顎臼歯部におけるインプラント埋入術式はじめに上顎臼歯部複数歯欠損症例の治療計画Basic 上顎臼歯部のインプラント治療の術式は、移植なし(グラフトレス)と移植あり(グラフト)の方法に大きく分けることができる(表1)。グラフトレス治療には、既存骨内の適正部Basic位に通常のインプラントを埋入する単純埋入のほか、(ショートインプラントの定義はさまざま1〜3であるが)短いインプラントであるショートインプラントを使う方法、あるいは意図的にインプラントを傾斜させて行う傾斜埋入などがある。加えて、移植をまったく行わないということからするとザイゴマインプラントもグラフトレス治療に分類される4。 移植を行う方法としては、Summersが1994年に発表しているオステオトームで槌打するソケットリフト5と、上顎洞の側壁を開窓して上顎洞粘膜の挙上を行うラテラルウィンドウテクニック、筆者らが開発したK2を用いた歯槽頂アプローチ、さらに歯槽骨頂側の骨欠損にGBRで対応する場合もある。できる限り低侵襲で手術を行いたいのは患者も術者も同じであり、同等の残存率であればより安全に短い期間で治療を終わりたいし、コスト面でも有利なほうが良い。 単純埋入ができればそれに越したことはない(図2、動画1)が、骨量が不足している時にショートインプラント(図3〜5)、傾斜埋入(図6)、あるいはソケットリフト(図7、動画2)を次の治療方法として考えたい。ソケットリフトは、ていねいに行えば治療の難度はそれほど高くはなく、まBasic
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