Quintessence DENTAL Implantology 2025年No.4
6/9

Quintessence DENTAL Implantology ─ 0640116小田師巳 Norimi Oda大阪府開業:医療法人 おだデンタルクリニック園山 亘 Wataru Sonoyama滋賀県開業:浅田歯科医院長期的に良好な予後が期待できる 現実的なインプラント療法連載をはじめるにあたってIntermediate 近年、非吸収性メンブレンを用いた垂直的 GBR(Guided Bone Regeneration:骨再生誘導法)を成功に導くポイントが整理され、われわれが行うべき手技のコツも集約されつつある。そのため、エキスパートによる垂直的 GBR 後の併 発 症 発 生 率 は 3 % に ま で 下 が っ て き た 1 。 こ の 垂 直 的GBRによって、重度歯周病に罹患した歯の抜歯後や外傷後の大きな顎堤欠損を有する患者に対してのインプラント療法が可能となり、患者のQOLを大きく改善できる可能性がある。当該部位が審美領域の場合(特にハイスマイル患者)、口腔機能の回復のみならず審美性も回復できるため、患者のその後の人生への貢献度は計り知れない。 しかしながら、垂直的な骨欠損量が 5 mmを超える症例では、GBRの難度が格段に高くなり 1 、審美領域においては複数回の硬・軟組織造成処置が必要となる 2 。そのような場合、大きな外科的侵襲や長い治療期間、高額な治療費など、患者が越えなければならない治療のハードルはさらに高いものとなる。また、エキスパートによる垂直的 GBRの併発症発生率が低下したとはいえ、多くの施術者による治療成績をまとめたシステマティックレビューにおけるそれ(創の裂開など)は、12.1〜16.8%といまだに高いものである 3 、4 。このように、報告によって併発症発生率に大きな差があるということは、術者のスキルや経験が結果に影響を与える大きな要因の 1 つであろうと考える。したがって、経験の浅い歯科医師が非吸収性メンブレンを用いた垂直的 GBRを単独で実施することは推奨されず、経験に富んだ専門医に紹介するか、代替法の検討を行うべきである。 そのため本連載では、垂直的 GBRのような特別な研鑽を積む必要がある極めて高度な治療法ではなく、平均的な外科手技のトレーニングを受けた歯科医師であれば、毎回おおよそ成功に導くことができるレベルの難度の治療法にフォーカスを当てたい。しかしながら、低侵襲治療という名の下に必要な造成処置を安易に怠り、長期的な予後が損なわれては本末転倒である。そこで、本連載のタイトルは「低侵襲」という言葉を用いず、「長期的に良好な予後が期待できる現実的なインプラント療法」とした。 第 1 回では、審美領域における大規模な垂直的 GBR 症例を提示し、難度の高い症例に対峙する際に施術医に必要とされる手技について解説する。本症例をとおして、このような治療を行うためには、特別な研鑽が必要であることに同意していただけると考える。第 2 回ではGBR 後の併発症とその対応を解説することで、難度の高い症例を治療ゴールに導くために習得すべき知識と手技を確認していただく。第 2 回までで、これらの治療ステップを超えるのは容易ではないことを理解していただいたうえで、第 3 回以降、「現実的なインプラント療法」について述べていく予定である。Intermediate第 1 回審美領域における大規模な垂直的 GBR

元のページ  ../index.html#6

このブックを見る