Quintessence DENTAL Implantology 2025年No.4
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Soft Tissue ManagementQuintessence DENTAL Implantology ─ 0652128増田英人 Hideto Masuda大阪府開業:ますだ歯科医院令和版 軟組織のトリセツはじめに結合組織の代替材料について第 9 回AdvanceAdvanceVCMの高い効果を示す研究VCMの効果に否定的な研究 前回、口蓋および上顎結節からの「結合組織採取」について深掘りした。さまざまな研究により、以前に比べると安全に質の高い結合組織を採取することができるようになってきたものの、テクニックセンシティブな面があり、ドナーサイト、レシピエントサイト 2 ヵ所に侵襲が加わるため、術者・患者ともに負担の多い治療であるのは間違いない。 そこで、侵襲や施術時間の観点から代替材料の使用も検討し た い。 代 替 材 料 と し てADM(Acellular Dermal Ma-trix、無細胞真皮マトリックス、ヒト由来のAlloDerm®やブ タ 由 来 のMucoderm®)、XCM(Xenogeneic Colla-gen Matrix)、VCM(Volume-stable Collagen Ma-trix)といったさまざまなものが開発・使用され、筆者も使用してきた。従来のコラーゲン材料(代表例:XCM[異種由来コラーゲンマトリックス ムコグラフト®、ガイストリッヒ社])はボリュームを維持することが難しく結合組織に代わるような効果は得られなかった 1 が、 近年開発されたVCM(ファイブロガイド、ガイストリッヒ社[日本未認可])はボリュームを長期間保つことのできるコラーゲン材料であり、その効果に期待がされている。 Thomaらが20名の患者に対して、インプラント埋入時に頬側にVCMもしくは結合組織を挿入設置し、補綴終了 2 週間後をベースラインとして、頬側「軟組織の厚み」を比較検討したRCT(ランダム化比較試験)ではCTG(結合組織移植術)群と同様に 3 年後、 5 年後もそのボリュームが維持され、辺縁骨吸収量に関しても両群で有意差がないという結果が示されている(図 1)2 、3 。 またHämmerleらによる多施設 RCTにおいても、VCMは軟組織の厚みを増やす面で、術後 1 年ではCTGと有意差のない結果が示されている 4 。代替材料の使用には手術時間の短縮や術後の痛みの軽減という大きなメリットもあり、このような効果が得られるのであればすばらしいのだが、上記と反する結果が出ている研究も存在する。 Cosynらは同様の実験を60名の患者に対し多施設 RCTとして行い、術前との「軟組織の厚みの変化」を手術直後、 3 、12、36ヵ月後に比較検討している(図 2)。この実験結果だがVCMは 3 ヵ月、12ヵ月のタイミングで大きくボリュームが減少し、CTGと同等の効果は得られないという結論になっており 5 〜 7 、 すべてのタイミングにおいて辺縁骨吸収量はVCM 群が有意に多いという結果が示された。 さらにCTG、 代替材料(XCM、ADM、PRF[自家多血小板フィブリン])によってインプラント周囲軟組織の厚みを結合組織の使い分けや併発症

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