Quintessence DENTAL Implantology ─ 0830122長期的に良好な予後が期待できる 現実的なインプラント療法GBR 後の併発症ケース小田師巳 Norimi Oda大阪府開業:医療法人 おだデンタルクリニック園山 亘 Wataru Sonoyama滋賀県開業:浅田歯科医院症例 1 :GBR 後に弱い感染を認めた症例GBR 後の併発症とその対応はじめにIntermediateIntermediate 第 1 回では手技的な難度が極めて高い、 5 mmを超える垂直性骨欠損を有する審美領域の骨再生誘導法(GBR)症例を提示し、垂直的 GBRは患者の人生に大きく貢献しうる術式の 1 つであることを再認識していただけたであろうと考えている。同時に、術後の併発症発生率(創の裂開や感染など)は12.1〜16.8%といまだに高いものであり 1 、2 、残念ながらある一定の確率で併発症は起こりうるものと理解しておく必要がある。 したがって、続く今回と次回は「GBR 後の併発症とその対応」について、意思決定に必要な理解すべき知識と習得することが望ましい具体的な対応法(手技)を整理してみたい。 GBR 後の併発症は「創の裂開によるメンブレン露出」が多くを占めており 2 、その対応法は感染(排膿)の有無で大別される 3(表 1 、2)。感染が生じた場合、メンブレンを速やかに除去することが基本となる。一方で、感染をともなわない場合、新生骨形成に必要な期間をとおして感染管理を行いながら経過を観察し、その後にメンブレンを除去することになる。 以下に感染の有無それぞれの症例を提示し、解説を行う。 患者は56歳の男性で、₆部へのインプラント治療を希望していた。術前検査より、インプラント埋入に先んじた段階法水平的 GBRが必要と診断した(図 1 -a〜c)。 ₈を抜歯し軟組織の治癒を待った後、₆部に水平的 GBRを行った(図 1 -d〜f)。下顎枝からボーンスクレイパーで採取した自家骨をBio-Ossと 1 : 1 で混合した骨移植材を、ネオジェン(PTFE 製メンブレン)を用いて骨面に固定した(舌側:スクリュー、頬側:ピン)。続いて、頬舌側のフラップに十分な減張を加え、水平マットレス縫合(ホールディングスーチャー)と単純縫合(クロージングスーチャー)を用いて、テンションフリーで閉創した。 2 週後に抜糸を行い、問題なく経過していたが、GBR 後8 週 に 自 覚 症 状 は な い も の の 2 ヵ 所 に 瘻 孔 を 認 め た(図1 -g)。瘻孔から化膿性の滲出液は認めず、メンブレンの露出も認めなかった。₅遠心部歯肉に発赤を認めたため、感染経路は造成部位に隣接した ₅遠心の歯肉溝からと臨床的に判断した。痛みや化膿性の滲出液を認めないため、分類としては「Class I. 弱い感染」に該当し、対応法としては「GBR後 5 〜 6 週待ってメンブレン除去」、予期される結果は「骨移植材の部分的な喪失」であることが想定された(表 1)。本症Intermediate第 2 回GBR 後の併発症とその対応(上)─理解すべき知識と習得すべき手技─
元のページ ../index.html#6