Quintessence DENTAL Implantology 2025年No.6
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能低下症」へと移行しやすい。しかし、こうした機能の下り坂を歯科的介入によって“なだらかにする”ことは可能である。筆者が目指す総合歯科医療の最終形というのは、包括的な治療を中心に、咀嚼、嚥下、呼吸、睡眠、栄養指導に至るまで、患者の生活機能全体を再構築することを目指す医療である。 本連載ではこれまで、インプラントを含む補綴治療における診断、設計、デジタル技術の可能性や、歯科衛生士、歯科技工士、管理栄養士との連携について述べてきた。それをふまえ最終回となる今回は、1つの症例を供覧しながら、「そもそもわれわれは歯科医療を通じて患者とどのように向き合っているのか?」という本質的な問いに立ち返り、読者諸賢とともに考えていきたい。Basicはじめに 歯科医療の目的が「噛めるようにすること」だった時代は過去のものになるかもしれない。現代の歯科医療に求められるのは、単なる口腔機能の回復ではなく、「何を食べ、どう生きるか」という患者の生活全体に寄与する支援である。特に超高齢社会を迎えた今、「食べられること」=「健康の維持」であり、欠損補綴治療は「生活の再構築」への進化が必要である。 図1に示すように、口腔機能と形態は乳幼児期から成人期にかけて発達のピークを迎え、その後は加齢とともに緩やかに低下していく。高齢期には、咀嚼・嚥下・構音・呼吸などの機能が複合的に低下し、「オーラルフレイル」から「口腔機図1 加齢による口腔機能と形態の変化。図2 オーラルフレイルと口腔機能低下症、口腔機能障害の関係。滑舌低下・わずかのむせ・食べ残し噛めない食品増加オーラルフレイル地域保健事業介護予防による対応口腔不潔咬合力低下咀嚼機能低下口腔乾燥低位舌顎機能低下舌口唇運動機能低下口腔機能低下症歯科診療所での対応摂食・嚥下障害咀嚼障害口腔機能障害専門的対応社会性・生活の広がり低下口腔リテラシー低下う蝕・歯周病・歯の喪失ポピュレーションアプローチ口腔機能と形態乳幼児期・学童期成人期高齢期(口腔機能の獲得・成長発育)(口腔機能の維持・向上<回復>)口腔機能低下症口腔機能発達不全症歯科医療介入(機能的)歯科医療介入(形態的・予防的)安藤壮吾 Shogo Ando愛知県開業:なみき通り歯科・矯正歯科口腔機能低下症を改善するチーム医療の実践─歯科医療を通じた患者との向き合いかたとは─第4回(最終回)総合歯科医院のつくり方100Quintessence DENTAL Implantology─ 0996

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