的に長い幅があるため、実臨床において具体的に「いつメンブレンを除去すべきなのか」という判断が案外難しい。筆者らは骨化に必要な時間を十分に稼ぎたいという考えから、できるだけGBR後12週経過してからメンブレンを除去することが望ましいと考えていた。しかし、そのタイミングが必ずしも適切でない場合があることを経験したので、供覧したい。症例1:GBR後に感染をともなわないメンブレン露出を認めた症例 患者は76歳の女性で、右側下顎前歯部の違和感を主訴に来院した。口腔内を確認したところ、₂唇側に瘻孔を認めた(図1-a)。歯根破折が疑われたため診断を目的にフラップを剥離したところ、やはり₃₂に破折線を確認し抜歯と判断した。₃歯根がアンキローシスを起こしていたため抜歯時に唇側骨ごと抜去する結果となり(図1-b)、唇側に大きな骨欠損が生じてしまった。そのため、軟組織の治癒を待った後、インプラント埋入に先んじてGBRを行うこととした。Intermediateはじめに 前回は、GBR(骨再生誘導法)後の併発症の大半を占める「創の裂開によるメンブレン露出」について、理解しておくべきエビデンスとその対応法について解説を行った。 第3回では、筆者らが経験したメンブレン露出症例をさらに追加し、それらの考察から得られた「露出したメンブレン除去のタイミング」や「メンブレン露出リスクを低減する方策」について、筆者らのオピニオンをまとめてみたい。Intermediateメンブレン露出症例をとおして得られた知見 前回解説したように、感染をともなわないメンブレン露出の場合、メンブレン除去のタイミングはGBR後6〜12週(表1)1とされている。しかし、この指標には6週間という時間表1 GBR後に感染をともなわないメンブレン露出を認めた場合の対応 Urban Iら(2023)より引用・改変メンブレンの早期露出(<3週間)メンブレンの後期露出(≧3週間)処置・ 1st:抗菌薬の全身投与とクロルヘキシジン による局所洗浄・ 2nd:6〜12週後にメンブレンの除去と 可動性の骨移植材の除去・ 1st:クロルヘキシジンによる局所洗浄 (抗菌薬は不要)・ 2nd:6〜12週後にメンブレンの除去と 可動性の骨移植材の除去予期される結果骨移植材の大部分は維持骨移植材は完全に(大部分)維持小田師巳 Norimi Oda園山 亘 Wataru Sonoyama大阪府開業:医療法人 おだデンタルクリニック滋賀県開業:浅田歯科医院IntermediateGBR後の併発症とその対応(下)─理解すべき知識と習得すべき手技─長期的に良好な予後が期待できる 現実的なインプラント療法第3回108Quintessence DENTAL Implantology─ 1004
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