Soft Tissue ManagementAdvanceはじめに 今回からは審美領域におけるインプラント軟組織マネジメントの各論に移りたい。まずは即時埋入における軟組織マネジメントである。抜歯にともなう硬・軟組織のリモデリングと歯槽堤のボリューム減少は不可避なものであり1、インプラント治療において審美性を獲得するためにはいかにそれを軽減、補償していくかを考えていかなければならない。 その中で即時埋入はインプラントがインテグレーションするまでに喪失する確率が高くなるというリスクがあるものの、いったんインテグレーションすれば他の埋入タイミングと同等の残存率が示される2手法であり、特に審美領域においてインプラント即時埋入と同時にプロビジョナルレストレーションまで装着するImmediate Implant Place-ment and Provisionalization(IIPP)という手法3を行うことができれば、一度の処置で低侵襲・短期間に、さらには治療直後から審美的な状態を維持することができるという大きなメリットがある。 審美領域における即時埋入は術後の唇側軟組織退縮リスクがある治療法ではあるものの、唇側軟組織の退縮を引き起こすリスク要因や回避法が解明されてきており、現時点で推奨されているプロトコルに則って施術すればもっとも高い審美性が得られる埋入タイミングであり4、審美領域のインプラント治療における第一選択だと筆者は考えている。まずは筆者が行った即時埋入症例を提示したい(図1)。 本症例は根尖に大きな病変があったが、システマティックレビューとメタ分析(SR&MA)では適切な感染源の除去などの対応ができれば残存率・骨レベル・軟組織レベルともに感染のない部位へ即時埋入をするのと有意差のない結果が示されている5。 IIPPによって、一度の外科処置で短期間に治療を終えることができ、その結果が長期的に維持できていることがわかる。クラニオフェイシャルグロースが進まなければ今後も審美性を維持できると考えている。 ただし即時埋入に関しては歴史的な変遷があり、過去にはインプラントを抜歯窩に即時に埋入することが、硬・軟組織の保存につながると考えられていたが、現在では完全に誤りであることが判明し、その中でどうすれば組織保存ができるかが解明されてきた(即時埋入の基本事項に関しては連載第3回をしっかりと理解したうえで今号を読んでいただきたい)。さらに近年、審美性を得るための多くのエビデンスが確立されてきている。 10年以上前の論文では術式において現在推奨されている手法と異なることを行っているものも多く、どの論文を参考にして即時埋入を行っていくかはよく精査する必要があると考えており、今回は2025年時点での最新エビデンスをもとに解説していきたい。増田英人 Hideto Masuda大阪府開業:ますだ歯科医院審美領域の即時埋入における軟組織マネジメント令和版 軟組織のトリセツ第11回118Quintessence DENTAL Implantology─ 1014
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