QDT 2024年11月号
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QDT Vol.49/2024 November page 122638粟谷英信歯科医師・姫路駅前グランツ歯科兵庫県姫路市南畝町2-50 オーパスビル3F藤尾 明(ラボサイド工程)歯科技工士・AXIA DENTAL TECHNOLOGY兵庫県加古川市加古川町粟津55-7のため、咬合再構成というのは、ハードルの高い、難解な治療だと思っていた。振り返ると、咬合再構成を行う際に、歯科技工士が担う工程(咬合器へのマウント、プロビジョナルレストレーション・最終補綴装置の製作など)を理解していないことが原因であったように思う。逆に、歯科技工士も歯科医師の治療内容を把握していないことが多いのではないだろうか。 筆者は幸いなことに、咬合再構成について経験豊富で理解が深い歯科技工士と組んで、咬合再構成に取り組む機会があった。いくつかの症例を通じて、何度もディスカッションを重ねることで、理論と実際の治療の工程がうまく結びつくようになった。その中でも今回の「クロスマウントテクニック」は咬合再構成において欠かせない重要な工程だと実感している。 咬合再構成症例では、下顎位が病的に偏位しているため、治療のどこかで中心咬合位(図1)へ収束させなければならない。そのため、複数回プロビジョナルレFeature article #2はじめに クロスマウントテクニックは、プロビジョナルレストレーションで煮詰められた咬合環境・歯周環境・審美的形態などの情報を、最終補綴装置製作のための作業用模型に正確にトランスファーするための咬合器マウント法である1。 咬合再構成を手がける歯科医師や歯科技工士には馴染みのある言葉かもしれないが、そうでない場合、詳細はよく分からないという方も多いのではないだろうか。実は筆者もそのひとりであった。頻度はそれほど多くはないかもしれないが、欠損が多く、咬合状態が悪化している患者や、不良補綴装置が装着され、適正な下顎位が失われた患者が来院することがあり、そのような患者の検査・診断を進めると咬合再構成が必要ではないかと気がつく。筆者は、「病的咬合の患者には、治療咬合を与えて補綴治療を行う」という概念は学んだが、実際に治療を進めるとなると、どのような順序で何をするべきなのか、多くの疑問が生じた。そ咬合再構成におけるクロスマウントテクニックの有用性とその手技について前編:クロスマウントテクニックとは

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