QDT 2024年11月号
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QDT Vol.49/2024 November page 1249大河:ラミネートベニアの予後に自信がもてるようになってきたことに加えて、私にとってはマイクロスコープの導入によってより精緻な支台歯形成が行えるようになってきたことと、患者さん側の低侵襲治療への期待に応えているという充足感が、面白くなってきたきっかけといえます。1997年に米国でその道の権威だったDr. Dennis Shanelec(故人・米国開業)の講義を受け、2000年ごろから自分のオフィスにマイクロスコープを導入したのですが、当初はマイクロスコープはマイクロエンドやマイクロサージェリーに使うものという認識が強く、窩洞形成や支台歯形成にはあまり使われていませんでした。しかし私は、これこそが支台歯[ Profile ]おおかわ・まさゆき 1987年、東北歯科大学卒業。2001年、代官山アドレス歯科クリニック(東京都)開院。2019年、日本歯科大学生命歯学部補綴Ⅱ講座非常勤講師。2000年代前半より、臨床のかたわら執筆活動を開始。「QDT」(Quintessence Publishing〔USA〕)にも複数回の掲載歴をもつ。また、国内はもとより米国、ドイツ、イタリア、イスラエルなどでの海外講演も多数。 さらに、デジタル・マイクロラミネートベニアのハンズオンコースも精力的に開催。日本臨床歯科学会理事長幹事/東京支部長/フェロー、EAED会員、奥羽大学歯学部同窓会本部 前学術部長、AMED前理事、日本歯科審美学会 認定医、日本顎咬合学会 認定医、Ivoclar Vivadent社 オピニオンリーダー、Carl Zeiss社 ワールドスピーカー。61『イノベーション・オブ・ラミネートベニア 20年の臨床と研究が示す価値』刊行によせて こうした中、2002年に当時ジュネーブ大学に在籍されていたDr. Pascal Magneが『Bonded Porcelain Restorations in the anterior dentition : a biomimetic approach』(米国・Quintessence Publishing)を上梓され、それを私が所属するSJCD(当時。現・日本臨床歯科学会)の山﨑長郎先生をはじめとする方々がすぐに翻訳し、同年中に日本国内でクインテッセンス出版から発売されました。私もさっそく読ませていただいたのですが、これまでの臨床の中で感じてきた「こんなに歯を削ってしまって良いのか?」という疑問がすぐに氷解しました。それ以来、歯質を可及的に保存した、バイオミメティック(生体模倣的)な修復治療を体系的に示したDr. Magneのコンセプトに感銘を受け、のめり込んでいきました。 率直に申し上げて、それでも当初は半信半疑ではあったのですが、この2002年ごろからクラウンに代えてできるだけラミネートベニアで修復処置を行うようになっていきました。「もし失敗しても、まだクラウンにできる」という思いもあったのですが、ベニア修復の成功に不可欠な支台歯形成のロジックや接着システムなどもどんどん進化していきました。結果として、現在でも多くの症例で安定した予後を得ることができています。形成に必要だという思いをもつようになっていきました。 また、当時は日本国内にマイクロスコープに関する学会がなかったため、米国のAMED(The Academy of Microscope Enhanced Dentistry)に毎年通い、講演もさせていただく中で、Dr. Domenico Massironi(イタリア開業)と知り合えたことも大きいです。彼もマイクロスコープを用いた支台歯形成で著名な方ですが、今でも交流があり、今年2月のシカゴミッドウインターミーティングでのAARD(American Academy of Restorative Dentistry)での基調講演も拝聴し、さらに進化しつづけようとする姿勢は私のメンターである山﨑長郎先生とどのあたりから、ラミネートベニアが面白くなってきましたか?

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