図1a 左からB1・A1シェードガイドが添えられたシェードテイキング写真。もっとも明度が高く、白いと言われているB1シェードガイドがグレーっぽく見える。明度が高い天然歯のシェードテイキングを行う際にはこういった現象が生じる。 図1aの写真を見ていただきたい。下顎前歯の色調は、VITA Lumin Vacuumシェードガイド(VITA Zahnfabrik,白水貿易、以下、VITAシェードガイド)と比較して色調に力強さがあり、「白さ」「明るさ」が目に飛び込んでくる。その力強さゆえに、B1・A1シェードガイドよりも彩度があるにもかかわらず、白く見えるような印象を受ける。しかし、下顎前歯の歯頚部の色調を抜き出し、各シェードガイドの歯頚部に貼り付けて比較すると、天然歯はシェードガイドよりも赤みがあり、彩度が高いことが理解できる(図1b)。つまり、明度の高い天然歯は、B1・A1シェードガイドと比べて彩度が高くても、視覚的にはシェードガイドよりも白く見えるという特徴をもっている(連載第6回参照)。 次に、それぞれの色調を数値で比較するために、天然歯、B1・A1シェードガイドの歯頚部1/3付近の色調分析を行った(図2)。まずは、B1・A1シェードガイドの分析結果に着目したい。この2種のシェードガイドにおいて、シアン・マゼンタ色の差が生じることは理解できる。しかし、彩度が低く、明度が高いと言われているB1シェードガ図1b 下顎前歯の歯頚部の色調を抜き出し、各シェードガイドの歯頚部に貼り付けることにより、天然歯の色調がシェードガイドよりも赤みがあり、彩度が高いことが分かる。イドに、A1シェードガイドにはない「+ブラック1%」の数値が確認できるのである。筆者はこの「+ブラック1%」がなぜ生じるのか、最近まで理解できていなかった。これは写真上のエラー、つまりフラッシュのムラではないかと考えていたのである。その理由として、肉眼ではA1シェードガイドと比較してB1シェードガイドに黒が添加されているようにはどうしても見えないこと、シェードガイドの色構成から考えても、A1シェードガイドと比較してB1シェードガイドに黒のピグメント(顔料)が添加されているとは思えないからである。 この原因について、昨年の連載をお読みいただけた読者のなかには、ピンときた方もいるのではないだろうか。つまり、B1シェードガイドは透明感が高く、明度が低いがゆえの「+ブラック1%」なのである。連載で色明度と反射明度の違いを理解した読者には、このニュアンスが理解できると思う。この図1は、色明度と反射明度の違いが再現された良い例と言えるだろう。QDT Vol.50/2025 January page 0037「+ブラック1%」の原因は「色調としての黒色」なのか「透明感」なのか?歯科における「色調構築」の再考(前編)明度の高い天然歯の色調は白く見えるという特徴をもっている37
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