静岡県浜松市中央区若林町1214鈴木英史 Eishi Suzuki歯科医師・鈴木歯科医院 まずは、治療用義歯を用いて審美性や機能性の回復が可能かを検証1し、その結果を基に最適な治療法を選択することが重要である。治療用義歯は単なる暫間補綴装置ではなく、最終補綴装置を見据えた重要な治療ステップであり、審美性、舌房の確保、力学的安定性を考慮し製作する必要がある。ティッシュコンディショニング(粘膜調整)により義歯の維持力を向上させた後に、患者に「義歯を使いこなす能力」をトレーニングにより身につけさせることで、十分な咀嚼機能を回復させることが可能である。さらに、得られた咀嚼能力をフードテストで評価し、患者にリハビリテーションの効果を認識してもらうことで、術者と患者が治療のゴールを共有できるようになる。本稿では前編と後編の2回に分け、治療用義歯を用いてリハビリテーションを行い、「義歯を使いこなす能力」を向上させたのち治療方針を決定した症例を供覧させていただく。前編:義歯の機能を最大限に発揮するためのトレーニングと「残存歯に影響を受けない咬合再構成」についてFeature article #1QDT Vol.50/2025 April page 0428はじめに 臼歯部に咬合支持のない、咬合崩壊している多数歯欠損患者(図1)では、残存歯の歯列不正や顎間関係に問題があることで審美と機能の両立は難しいことが多く、また初診時には患者が審美的・機能的にどの程度の改善を望むのか明確でない場合が多い。これらの患者を治療する際には、歯をどの位置に排列するのか、そしてそれをどのような補綴装置(インプラント、部分た、その際に残存歯をどうするのか(歯周治療、抜歯、要がある。 咀嚼機能の観点から考えると、インプラントを用いた補綴装置が従来型義歯より優れており、可撤式補綴装置は妥協案だと考えられることが多いが、金銭的な制約がない場合でも可撤式補綴装置を選択する患者が一定数存在することから、固定式の補綴装置がすべての患者において最適であるとは限らない。床義歯〔以下、RPD〕、総義歯)で実現していくのか、ま補綴治療、矯正歯科治療)を決断し、咬合再構成する必22治療用義歯が導く多数歯欠損患者の咬合再構成〜審美と機能の融合を目指して〜
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