QDT 2025年4月号
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 前歯部修復治療において、補綴装置はさまざまな審美要件を満たす必要がある。歯冠単位の評価では、天然歯の形態学から逸脱せず、色調設計におけるルール しかしながら、臨床上、あらゆる条件が整った中で補綴修復治療が行えるシチュエーションはそう多くはない。たとえば、歯冠サイズが揃わない症例(図2)や、理想的な修復スペースが得られないような症例(図3)を順守しなければならない。また、歯列単位の評価では、両側のバランスを重視し、左右対称性を優先して広範囲の評価をしなければならない(図1)。①形態②歯冠サイズ(幅径・長径・厚み)③表面性状④色調(明度・彩度・色相)⑤光沢度⑥キャラクターは多い。また、補綴治療の範囲を超え、包括的な治療が必要となる場合など、理想的な審美の獲得には、相対的な評価も欠かせない(図4)。歯冠の評価基準歯列の評価基準審美修復に必要な臨床形態学(前編)abc45歯冠サイズが揃わない症例①排列(Smile Arc1)②Incisal Framework2③Gingival Framework2④口唇との調和QDT Vol.50/2025 April page 0451グ)。左右非対称な修復条件のなか、わずかな形態のコントロールを行うことによって、対称的な修復治療が達成された(担当医:木戸淳太先生〔つきやま歯科医院 専門医療クリニック天神〕)。図1 歯冠・歯列のそれぞれの基準を高水準で満たすことで、審美結果が大幅に良化する。図2a~c 上顎右側中切歯の修復治療。切縁観から、歯冠幅径を対称的に合わせるための十分なスペースがないことが分かる。臨床上、このような単独歯の修復治療においては、左右対称な修復スペースが得られることはそう多くない。本ケースでは、隣接面コンタクトポジションを唇側へ設定しながら、唇側のエンブレジャーの開きを浅めに展開した。さらに、それでもスペースが不足する場合は、切縁ポジションを可能な範囲で唇側方向へずらし、隣在歯とラッピングさせる。図2d 装着された最終補綴装置(IPS e.max Press Multiインゴット〔Ivoclar Vivadent〕によるフェイシャルカットバックレイヤリン補綴装置に求められる前歯の審美要件

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