QDT 2025年5月号
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*1鈴木英史 Eishi Suzuki/*2奥森健史 Takeshi Okumori*1歯科医師・鈴木歯科医院 静岡県浜松市中央区若林町1214*2歯科技工士・デンタル・プログレッシブ 奈良県奈良市四条大路2-2-13-5後編:義歯の機能を最大限に発揮するためのトレーニングと「残存歯を活用した咬合再構成」についてFeature article #124QDT Vol.50/2025 May page 0560 多数歯欠損患者における咬合再構成は、機能的および審美的な回復を目的とした包括的な治療であり、患者の口腔内状況や治療目標に応じて多様なアプローチが求められる。その中でも、咬合再構成の方法は大きく分けて、「残存歯に影響を受けない咬合再構成」と「残存歯を活用した咬合再構成」の2つに分類される。前者は残存歯の状態に左右されず、自由度の高い咬合設計が可能である一方、後者は残存歯の保存を前提とし、歯の位置や植立方向などによる影響を受けるため、治療計画の立案および実施において高い技術と慎重な判断が求められる。 とくに「残存歯を活用した咬合再構成」は、残存歯を可能な限り保存しつつ、機能的かつ審美的な回復を目指す治療方針であるが、治療内容にもよるものの治療期間が長期化する傾向があり、患者の治療への協力度やメインテナンスの継続性が治療成功の鍵を握る。また、歯周病や歯列不正の改善にともなう歯肉退縮や歯冠の延長が審美的な障害となる可能性があるため、患者の主観的な満足度を考慮した治療計画が必要である。さらに、初診時における咬合平面の乱れや下顎位のずれ、歯の位置異常が認められる場合、最終的な補綴設計を行うことは困難であり、仮診断に基づく治療計画のもと、治療用義歯を用いた咬合再構成を行い義歯の質を向上させるとともに義歯を使いこなす能力を向上させ、リハビリテーションが終了した上で再評価を行って最終的な治療方針を決定することが重要であると考える。この後編では、多数歯欠損患者に対する「残存歯を活用した咬合再構成」の治療プロセスについて、初期治療から治療用義歯を用いた咬合再構成、最終補綴設計に至るまでの流れを2症例供覧させていただく。その中で、このケースの技工を担当した歯科技工士の視点から、それぞれのケースを製作した際の工夫や注意点、治療用義歯による評価の重要性についても解説していく。はじめに治療用義歯が導く多数歯欠損患者の咬合再構成〜審美と機能の融合を目指して〜

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