図1 「残存歯を活用した咬合再構成」の治療の流れを示す。1)「残存歯を活用した咬合再構成」における治療の流れ2)「残存歯を活用した咬合再構成」の際に与える咬合について25①資料採得、検査、診断 ②初期治療:歯周治療、矯正歯科治療、根管治療、う蝕処置、仮義歯の製作および調整、旧義歯の調整③治療用義歯を用いた咬合再構成④再評価⑤最終補綴設計の決定QDT Vol.50/2025 May page 0561治療の流れ※ここから先は保険内治療では対応不可能■「残存歯を活用した咬合再構成」の治療の流れ治療用義歯が導く多数歯欠損患者の咬合再構成 〜審美と機能の融合を目指して〜(後編) 前編でも解説させていただいたとおり、まずは「残存歯に影響を受けない咬合再構成」と「残存歯を活用した咬合再構成」の最終補綴治療結果のイメージを患者に見てもらい、治療のメリット・デメリットを説明した上で治療のゴールを決定する。とくに希望がなく、治療期間についても短期間での解決を望むということでなければ、「残存歯を活用した咬合再構成」をすることを選択することとなる。 治療の流れは図1のようになる。初診時に咬合平面が乱れ、下顎位がずれ、歯の位置異常がある状態では検査・診断および最終的な補綴設計を行うことは難しい。初診時の診断はあくまでも仮の診断である。治療用義歯で仮の補綴設計を行い、それを評価してからでなくては確定的な診断ができない。 残存歯の扱いを考えなければならないのであるが、根管治療や歯周治療が必要な場合は初診時に最終的な保存の可否は決定できない。なぜならば、失活歯の場合、破折している、あるいは残存歯質がないなどの理由で保存不可になってしまう可能性があるからだ。欠損があり、機能的に不便であるということであれば仮義歯を製作する必要があるが、その際に動揺度の高い重度の歯周病の歯やあまりにも歯列・咬合平面から逸脱している歯、挺出あるいは傾斜している歯に関しては治療初期の段階で保存不可と判断し、抜歯してから仮義歯を装着する。 その上で、初期治療として歯周治療、根管治療、矯正歯科治療を終えておく必要がある。初期治療が終了した後に治療用義歯を製作し、ここから咬合再構成を行っていくこととなる。治療用義歯を装着し、リハビリテーションとトレーニングを行うことで、「義歯への適応」および「義歯を使いこなす能力」の確認を行い、さらに審美的・機能的な改善を確認した後、最終補綴治療の補綴設計を決定する。 歯科矯正学的な理想的な咬合はⅠ級咬合であるといわれており、当然咬合再構成の際はそれを目指すべきだと信じている歯科医師も多い。ただ、ここから逸脱しているのは不正咬合だとする歯科矯正学的な考え方に否定的な考えも多い1。骨格性に異常のあるケースにおいては外科的矯正歯科治療なしでは、理想的なⅠ「残存歯を活用した咬合再構成」における治療の流れ
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