QDT 2025年6月号
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連載Kenichi Matsuda歯科医師:医療法人社団ハイライフ 大阪梅田歯科医院大阪大学大学院歯学研究科 有床義歯補綴学・高齢者歯科学講座 臨床教授大阪府大阪市北区梅田2-6-20 パシフィックマークス西梅田2F松田謙一 第6回 最終印象(前編) 前回(5月号)は技工サイドの作業となる、模型の咬合器へのマウントやナソメータM付きのトレーの製作について解説を行った。今回は、そのトレーを用いて BPSにおける印象採得は、閉口印象法と呼ばれる方法で行う。閉口印象法は残念ながら補綴学用語集に記載がなく、正確な定義を記すことが難しいが、過去の文献等で“closed mouth impression tech-nique”として活発に議論されてきた印象法が、まさにBPSで採用されている印象法にあたる。すなわち、咬合床などの閉口可能なトレーを用いて、印象採得中には主に閉口状態で、患者自身による運動を利用して辺縁形成を行いながら採得する方法である(図1)。診療室で行われるステップ、最終印象について考察していきたい。 では、なぜBPSでは閉口印象法を採用しているかというと、実はBPSの誕生以前まで歴史を遡る必要がある。BPSの基礎理論を考案した一人であるドイツのRainer Strackは、“患者の生体運動から発生した“Biogenic Model”によって義歯を製作するべきである”と記している。そして、BPSでは可能な限り患者運動を取り入れて臨床を行うために、閉口印象法が採用されたと考えられる。―その理論とテクニックを整理する―67QDT Vol.50/2025 June page 0741義歯臨床の成功率を高めるBPS義歯臨床の成功率を高めるBPSBPS最終印象(前編)第6回はじめにBPSではなぜ閉口印象なのか?

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