QDT 2025年7月号
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伊藤彰規第 1 回 前歯部審美領域における歯と顔貌・口唇・歯肉の評価基準はじめにLEVEL NEXT STUDY CLUBリレー連載 審美修復治療成功のためのプロセス伊藤企画/兵庫県神戸市中央区栄町通 2 - 4 - 7 NR BUILDING202 補綴修復治療において機能面が重要であることは言うまでもないが、近年では、患者の顎口腔に対する審美的な要求が高まることで、ますます高い審美性を求める患者が増えてきている。 これまで歯科技工士が補綴装置を製作するにあたっては、「歯」という単位が重視されてきたと感じる。しかし、現在の審美修復治療においては、「歯」はもちろんのこと、「顔貌」や「口唇」との調和を意識した補綴修復治療が求められてきているのではないだろうか。 審美的な評価を行う際は、まず、患者の骨格の特徴や顔貌から導き出される基準線に対して評価を行う。それだけではなく、顔貌の特徴や動きのある表情に対しての評価を行うことも重要となる。 次に、歯と口唇との関係の評価を行う。歯と口唇との調和が審美性に大きな影響を与えることは言うまでもないが、とくにスマイル時の歯肉露出量や口唇の動きに対して歯の位置を決定することが大切になると考える。口唇の形態や上唇の可動域も大きな影響を与えるために注意が必要であり、過剰に動く上唇や、歯を覆う唇のラインがある場合、歯の位置を調整し、口唇の自然なラインとのバラン74QDT Vol.50/2025 July page 0874スを獲得することが求められる。これらは、ガミースマイルや不整な歯肉ラインの修正を必要とする症例においてもポイントとなる。 このようにさまざまな観点から審美的評価を行うことが、患者が求める美しい笑顔を実現するためには必要であり、それらを達成するためには、歯科医師と歯科技工士が密に連携し、慎重に治療計画を立てる必要がある。 今回供覧するのは、20代の女性患者が「前歯をきれいにしたい」「ガミースマイルが気になる」という主訴で来院した症例である。歯科医師の検査・診察の結果、矮小歯・破折歯・叢生が確認され、これらの問題に対して矯正歯科治療を行い、その後、ラミネートベニアを用いて審美修復治療を行うこととなった。とくに矮小歯や破折歯に対しては、形成デザインや適切なマテリアルの選択が非常に重要であり、治療計画の段階から慎重に検討する必要がある。 本稿では、前歯部の審美修復治療における顔貌や歯肉との調和を中心に、ラミネートベニア修復治療の方法を解説する。これにより、審美修復治療における実践的な指針を提供し、臨床に役立つ新たな知見を得ることを目指す。

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