はじめにQDT Vol.50/2025 August page 0978前編: 光の特性を活かしたステインの考え方枝川智之有限会社パシャデンタルラボラトリー千葉県流山市南流山 1 -19- 7 日本における歯科用ジルコニアの歴史を振り返ると、 歯科治療に使用されるようになった2005年ごろは、不透明なジルコニア( 3 Y-HAおよび 3 Y)をフレーム材料として用い、切縁側から口蓋(舌)側までカットバックしたうえで陶材を用いて色調表現を行っていたやすことで、歯科用ジルコニアの透光性は改善されてきた。とくに、高透光性ジルコニア( 4 Y、 5 Yおよびている。現在では前歯部においても、0.3~0.6mm程度のレイヤリングで色調を表現するライトレイヤリングやマイクロレイヤリング、陶材を使用せずに0.1mm 以下の薄い層で色調を表現するステイン法などが一般的になってきている(図 1 )。こうした手法の変化が生じている時代だからこそ、審美性を求めて天然歯に近づけるために、偉大な諸先輩方がこれまで積み上げてきた知識と技術を、今一度振り返る必要があると感じている。 本稿では、モノリシックジルコニアに対するステイ(フルレイヤリング)。その後、イットリアの含有量を増6 Y)の開発によって、色調表現の手法にも変化が生じ56ン法に焦点を当てて解説していきたい。モノリシックジルコニアへのステインについて、筆者は2019年に上梓された『QDT 別冊ジルコニアモノリシックレストレーションコンプリートブック』1 にて一度自身の考えを書かせていただいたことがある。この際、焼成後のステインの色調を焼成前に確認して作業を進めることができる「ヴィンテージ アート ユニバーサル 山本リキッド」(松風、以下、山本リキッド)の優位性について解説させていただいたのだが、グレージングパウダー(以下、GP)練和時の操作性などから、 その当時行っていた手法を再考する必要があると感じていた。これは、本誌2023年 8 、 9 月号で執筆した「DXを意識した労働生産性の向上と人材育成の両立」2 で述べたように、誰が行っても一定のクオリティが保てるようにシステム化することで、会社全体の「作業の効率化」と「品質の安定」に繋がると感じているからである。 そこで今回は、改めて以前に解説した内容を引用しつつ、諸先輩方の知識や技法を現代の手法に反映させる考え方についてもご紹介したい。Feature article #2モノリシックに対する立体感のある表現を目指して
元のページ ../index.html#3