QDT Vol.50/2025 August page 1012能的な条件下において、それらをいかに落とし込み、患者の個性と調和させることができるのかである。とくに歯科技工士の立場として、排列や歯冠形態の選択は、治療計画の段階で慎重に検討することが重要であると考える。 以上を踏まえて、今回はMIコンセプトの下で修復治療を行った症例を紹介したい。現代の歯科治療においてMIは重要なキーワードとなっているが、実際の臨床現場においては、「できる限り歯質を保存したい」「理想的な審美を獲得するためにはスペースが欲しい」という相反する想いが拮抗しがちである。今回は、歯科医師と事前に十分に相談することで、MIを重視して必要最小限の介入にとどめながらも、患者の求める審美的改善を行うことができた症例を紹介したい。とくに本症例では、顔貌に調和したアーチデザインを達成するために、歯列の三次元的な評価と、MI 修復における歯冠形態の変化に注力しているので注目していただければ幸いである。北村 悠LEVEL NEXT STUDY CLUBリレー連載第 2 回 顔貌に調和したアーチデザインを目指した審美修復症例はじめにCitta eterna/愛知県名古屋市守山区下志段味 2 -1526 審美修復治療を成功させるためには、歯冠の形態・色調を回復させるのはもちろんのこと、顔貌や口唇と調和した治療結果を目指すことが重要である。口元が与える印象は、表情や会話などの動きに大きな影響を及ぼすことから、顔貌や口唇を考慮した補綴装置は患者がもつ個性に対しても大きな影響を及ぼすことになる。 また、一般的に、われわれ歯科技工士が直接患者と対面する機会は限られており、与えられた情報をもとに、模型上で想像を巡らせることがある。しかしわれわれは、そういった環境下においても、より患者に調和した補綴装置を製作する必要がある。この際、その最終的なゴールを設定するための「専門的な知見」「明確な評価基準」「確立したコンセプト」をもち合わせていなければ、治療計画の段階から迷走してしまうことになる。ここで重要なことは、「専門的な知見」「明確な評価基準」「確立したコンセプト」を有することだけではなく、そのうえで、患者がもつ歯列や機90審美修復治療成功のためのプロセス
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